野がも 公演情報 劇団俳優座「野がも」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ドロドロの昼メロのような話である。イプセンの作品が書かれた1880年代で、その時代にはまだ世間のスキャンダルが演劇の素材にはなっていなかった。離婚、妻の家出、妻の不倫、婚外子、相続問題などなど、(まだ上流階級が主だったとは言え)一般市民のトラブルを素材にして舞台の上の人間の真実を描いて「近代劇の父」と言われている。
    今回の俳優座の上演は「築地小劇場百周年記念上演と角書きれているように、日本でも新劇が始まった頃から数多く上演されている。随分昔に見た記憶では、暗い室内会話劇で人生の真実の発見と言うよりは、暴露ものという感じだった。五幕の舞台は殆ど主人公の家の中、「野鴨」というのは家で飼っていた家鴨である。長いという記憶もあったが、今回は、全体を二幕にまとめて、時間経過を音響効果の音と、並行してシーンを進めるという処理で、複雑な人間関係のドラマがどんどん進む。このテキストレジの旨さが第一だろう。
    俳優たちが上手い。俳優座でいつも感じるのだが、端役まで、なぜそこにいるかが解る。ドラマの世界を支配する財産家(加藤佳男)のお手伝い(清水直子)で、お手つきとなって、かつての共同経営者の息子(斉藤淳)に下げ渡しになって、今は一人娘(釜木美穂・新人)をもうけ、財産家が与えてくれる捨て金で写真の店を妻がやりくって暮らし、本人は発明の夢にすがって生きている。親に反発して山の中の鉱山で労働者の待遇改善に努めている財産家の息子(塩山誠司)が戻ってきて、かつて親しい友人であった息子同士がそのパーテイ出会うところから舞台は開く。
    このパーティのウラの近代社会の生んだ歪んだ人間模様が次々と暴かれていくドラマである。筋はよくわかる。俳優も的確に演じていて、清水直子など、まぁ、むちゃくちゃに上手い、よく客演で呼ばれるのも頷ける。再婚をもくろんでいる財産家の妻となる女(安藤みどり)も、カモを飼っている一人娘も、ベテランから新人まで、揃って上手い。しかし、いまは市井では見つけにくくなった日陰の身で暮らす子供たちを巡る葛藤にリアリティを出す演技はかなり難しく(コミカルな選を狙ったのは冒険だった)苦労しているが上滑りしてしまうのは時節柄やむを得ない。この俳優たちの大健闘が第二。
    イプセン劇をいま、その原作に忠実に生かすとしたら、良い出来だった、と言うことになるだろう。しかし、巧妙に組まれた物語は終わってみれば古めかしいし、俳優たちの旨さも、一昔前に、役者の揃った時代の新派の舞台を見るようである。
    そこをいささか知っているものには現代新派も悪くないと楽しめるが、結局は日活映画を支えた新劇団黄金期の俳優たちとおなじ役割を果たすだけになってしまうのではないか、とも思う。築地百年、劇場消滅の時期である。そうなると、これはまさにリアルな俳優座が支えた新劇そのもののドラマと言うことになってしまう。時代の転換点を感じさせる舞台でも会った。zそれはどうなんだろう。15分の休憩を挟んで1時間25分と1時間の二幕。稽古場劇場は老人客で満席。

    ネタバレBOX

    ここで言う「日蔭の身」というのは、昨今はどこにでも見られる「母子家庭の親子関係」や「契約で暮らす第二夫人」とは、ぜーんぜーん違う。そこが明確になっていないとこの芝居なんだかいまの人には訳がわからないだろう。。真鍋さんのお近くにはそんな方がいないのは残炎だった。、

    0

    2024/06/12 09:30

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大