デンギョー! 公演情報 小松台東「デンギョー!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/06/05 (水) 14:00

    座席1階

    小松台東で作・演出をする松本哲也は宮崎県の出身。パンフレットには電気配線工事会社の広告がさりげなく載っていたりして、これと松本の関係が気になる。彼はここで今作の取材をみっちりしたのだろうか。全編宮﨑弁で構成された今作は3度目の再演。小松台東のヒット作だ。

    宮崎県にある小さな電気配線工事会社「宮崎電業」。現場に出る作業員たちの控室が舞台だ。冒頭、ここに現場上がりの営業部長が背広の男を連れてくる。東京で銀行に勤めていて故郷に戻った男だが、執行役員として迎えるという。下請けを含む作業員たちは「聞いてないよ」というけげんな表情で険悪なムードになる。
    この物語の陰の主役は宮崎電業の社長だ。人情に厚く社員と意思疎通をし、とても慕われていることが分かる。そして、今は入院中とか。これについても、作業員たちはきちんと伝えられていないようで、営業部長への不満が際立つ。特に、同期である現場主任は面白くない。
    「陰の」としたのは、この物語で社長は舞台に登場しないからだ。社長を中心に人間関係が続いていたこの小さな会社が、社長の入院という事態に少しずつひびが入ってくる。作業員同士の関係、営業サイドとの溝、社内結婚をしたベテラン女子社員と、ひとり親でぐれかかっていたところを社長が入社させた若い女子社員。それぞれの登場人物のつながりやお互いの感情が、縦糸になり横糸になり編み合わさっていく見事な会話劇が楽しめる。

    社員のプライベートなことを堂々と先輩社員が詮索して語らせるなど、今ならパワハラかセクハラみたいになる昭和の雰囲気がとても温かく感じる。執行役員として入った男は暇を見ては控室に来て人間関係を結ぼうとするが、職人かたぎの作業員たちには「元銀行員=エリート」という先入観や、何といっても「宮崎✕東京」という都会への怨嗟の壁がある。だが、執行役員の男は何回もぶつかりながら壁を壊そうとする。その愚直な行動が、とても感動的で胸に刺さる。

    現場を抱える小さな会社の本格的な会話劇は異色であろう。だから、3演でもお客さんは満足する。今日は平日の昼間、しかも三鷹という少し足場の悪い(劇場には失礼だが)ところだからかもしれないが少し、空席が目立った。だが、この芝居は三鷹からバスに乗っても見る価値がある。お勧めだ。

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    2024/06/05 18:55

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