ライカムで待っとく 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「ライカムで待っとく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    初演の時は劇場が遠いのでパスして、後で後悔した。今回は是が非でもと、早めに予約して臨んだ。
    初演後の『悲劇喜劇』に戯曲が載って読んだはずなのだが、1964年の米兵殺傷事件の容疑者の経験に迷い込む話という記憶が全然なかった。
    俳優たちは、現代の本土のライターとその妻は、いわば事件を目撃するコロスのようなものであって、その周囲の沖縄の人たちが真の主役。現代のタクシー運転手と、妻の祖父で写真館主人の佐久本寛二を演じる佐久本宝の弾けた演技がよかった。重いテーマだからと言って沈むことなく、明るい舞台にしていたと思う。現代のユタ?のおばあと、60年前の飲み屋のおかみを演じたあめくみちこも自然なコミカルさがいい。横浜の若い女性伊礼ちえ(蔵下穂波)の、「基地県なのに、神奈川の人は反対などと騒いだりしない、大人ださー。だからここが好きなの」と、神奈川をいじる皮肉が嫌味でないのも、素直な演技のおかげだろう。

    回り舞台と、周囲のたくさんの空の段ボール箱をうまく使い、テンポの速い場面展開だった。

    ネタバレBOX

    さすが沖縄の若い劇作家である。沖縄からの告発の声に、本土の我々では言えない鋭さがある。
    沖縄の戦争や基地被害を目の当たりにして、本土人に「寄り添ってください。今までもそうしたように寄り添ってくれればいいんです」とは、きついアイロニーである。

    ライター・浅野夫婦の一人娘ちえみがライカムで行方不明になる。もう一人、伊礼ちえも。うろたえる夫婦に、ウチナーンチュたちは「どちらか一人は見つからない。それがここの決まりです」と残酷な覚悟を迫るが、夫婦はとても受け入れられない。これが本土が沖縄に押し付けている「決り」なのだと、観客に突き付けられて、胸に刺さった。観客も背負う問題だと訴えるように、一瞬客席の電気も明るくなった。
    戯曲でもこの場面は何となく覚えている。この最後の印象が強くて、その前を忘れてしまったようだ

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    2024/06/03 10:17

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