去りゆくあなたへ 公演情報 劇団BLUESTAXI「去りゆくあなたへ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    優しさ 温かさに溢れた好公演。
    葬儀会館を舞台にした2つの家族の物語だが、関連することなく それぞれが独立した物語を紡いでいく。逆にそうすることで、去り行く人と残された人の思いが しっかり伝わってくる。そして2つの家族に共通した思いのようなものが浮き彫りになってくる。亡くなった人からの、満たされないと思っていた愛情。しかし そこには思いもしなかった深い情愛が…。亡くなって初めて知る情の深さに涙する。そのラストシーンに多くの観客がすすり泣く。

    舞台は葬儀会館の第1控室と第2控室、その特定の空間で 通夜という特別な日。そこで繰り広げられる軽妙だが滋味ある会話が心に沁みる。舞台にありがちな2つの物語の関連付よりも、それぞれの違った<情愛>を描くことによって、家族のあり様の幅を観せる。なお 家族と記したが、厳密には少し違って、そこが妙。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は葬儀会館の控室。下手に座敷--座卓や座布団等、中央--障子窓(上演前には枝葉の影)、上手--ソファが置かれている。捌け口には暖簾。このスッキリとした(飾り気のない)セットの中にリアリティを感じる。

    第1控室は、元中学校校長の森家の葬儀。喪主は、故人の次男 卓也が執り行う予定。ずいぶん前に退職していること、近所付き合いもなかったことから 家族葬にしたい。自宅で嫁 美智子を始め家族皆に介護されながら最期を迎えた。その介護の苦労話が実にリアル。
    第2控室は、劇団灼熱の元座長の葬儀。故人はアパートで孤独死しており、遺体の引受人がいない。劇団は解散していたが、元劇団員が縁ありと葬儀を執り行うことにした。元座長には別れた妻・娘がおり、連絡したが…。そして 葬儀を演劇仕立てにしようと、奇抜なアイデアの実行。

    この2つの葬儀を関連させない。元校長は 家族に介護され、最後は皆に見守られて亡くなる。一方 元座長は 離婚し、アパートで孤独死。最期を迎える その時を対比するような描き方。勿論その正否のようなものを説いている訳ではなく、現実にある状況を紡ぐ。舞台にありがちな関連付けをせず、敢えて並行した2つの物語にすることで、<死>を考えさせる。同時に 去り行く人の<生き様>を観るようだ。しかも、身内だけではない 幅の広さ奥深さも感じられる。

    森家には長男 和也がいるが、若い時に家を出て消息知れず。母の葬儀にも参列していない。しかし、突然 若い女性を伴って現れた。父に反発し心配ばかり掛けていた。
    一方、元劇団員たちは、座長の稽古が厳しかったことを懐かしんでいる。劇団員たちは入団する前に何らかの挫折を経験している。演劇は好きだが、生活もある という現実。
    夫々の葬儀は、手がかかる子(長男)ほど可愛い、現役教師の時には 不良っぽい子の面倒をみていた。挫折した者は強い意志を持つ、その成長を心待ちにしている、そんな愛しさが伝わる描き方だ。そこに 去りゆく人の思いが しっかり込められている。

    舞台技術は、時々聞こえる外の騒音(暴走族のバイク音?)、人の心情を効果的に表すスポットライト。場面に応じた照明の諧調など、実に丁寧な観せ方だ。そしてラスト、長男 和也の(最期の)挨拶が涙を誘う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/05/24 06:16

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