S高原から 公演情報 青年団「S高原から」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    奇妙な病が発生している日本。一見、病状はないのだが、それが発症すると徐々に弱って死んでいく。深い眠りに落ちるように。かつての結核患者みたいに高原にある高級なサナトリウムで療養生活を送る人々。(何故彼等にこんな経済的余裕があるのかは話の都合だろう)。人から人に感染することはなく、見舞客が気軽に頻繁に訪れる。コーヒー(刺激物)を摂ったりテニス(激しい運動)をしたりは、人によっては禁じられている。
    常人よりも死をリアルに密接に感じる毎日。「メメント・モリ、カルぺ・ディエム」(死を見据え、今日の花を摘め)。堀辰雄の『風立ちぬ』の有名な台詞、「風立ちぬ、いざ生きめやも」(風が起きた、さあ生きようか···、いや生きられはしまい)。
    徐々に“下”の世界とこのサナトリウムとが遠ざかっていく感覚。どうせすぐに消えて失くなってしまうのならば今更何をする必要があるのだろうか?ここは終末の楽園。辿り着いた終着駅。天井で反時計回りにぐるぐる回転を続けるシーリングファンがこの世界そのもののようだ。

    宮藤官九郎っぽい、入院して半年の木村巴秋氏。
    面会に来た彼女の瀬戸ゆりかさん。ある意味、前半の主人公。
    その友人、田崎小春さん。やたら印象に残るリアクション。香坂みゆきっぽい。

    そこそこ成功した画家だった吉田庸氏。作品全体を奏でるのは、彼の言いかけた台詞。
    かつての婚約者でいいとこのお嬢様、村田牧子さんは美智子上皇后に似てる。
    彼がここで絵のモデルになってもらっている南風盛(はえもり)もえさん。凄く何かがありそうな役だが何も見せない。

    中藤奨(なかとうしょう)氏は女好きの遊び人。

    狂気の兄妹、松井壮大(もりひろ)氏と山田遥野(はるの)さん。兄のサイコパス度合いは飯伏幸太を彷彿とさせる。怪獣スリッパ。

    ネタバレBOX

    飲み物を運ぶ看護人、島田曜蔵氏。コールベルをチリリンチリリン鳴らされて到頭最後に壊れる。
    女性看護人の南波圭さんの語る電車内の怪。傘を抱えて寝ていて、駅に着いて気付くと傘が巨大な物に何故か変わっていた。

    倉島聡氏の降板により永山由里恵さんが新しい入院患者を演ったのだが異様な違和感。意図が見えないキャラクター。元々は何の意味があった役なのか?

    平田オリザ氏とは全く接点がないまま来た。そういえばももクロの『幕が上がる』を2015年、Zeppブルーシアター六本木で観たが、脚本が平田オリザ氏だった。(演出は本広克行)。まあ良くも悪くもないような印象。で、今回こまばアゴラ劇場が閉館という事で慌てて観ることにした。(多分、今後観る機会はなさそうだから)。
    やはり同じような感想。つまらなくはないが面白くもない。何か物足りなさが残る。もっと面白くは出来るんだけれどそうする気もない、みたいな。自分の周りにいた小津安二郎信者はこういう考え方をする連中が多かった印象。品が良い、というのか。

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    2024/04/17 15:09

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