実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/04/11 (木) 14:00
座席1階
100年前、50年前、そして今の東京を舞台にした3本立て。1作目が岸田国士、2作目が別役実という演劇の教科書に出てくる劇作家による原作で、3作目が深井邦彦によるオリジナル。3作目が一番、道学先生らしい舞台で、この一作だけでも十分に見る価値がある。あえて言えば、3作目をもっと作り込んで上演してくれたらいいのに、と思った。
3作目は、亡き妻への忘れ得ぬ思いを描いた作品だが、これがなかなか面白い。妻が亡くなった後父と娘の二人暮らしだったが、いよいよ娘が結婚する。家を出て行くことになり、冷蔵庫から娘が「これ、捨てていい?」と持ってきたタッパーには、妻が生前に作った肉じゃがが入っている。妻が死んでから6年。ずっと捨てられずにいた。なぜなら、食べてしまうと、もう同じものをつくってくれる人がいないから、ということだった。
これだけでも、ちょっとパラノイアかなと思うようなエピソードだが、本作のメーンテーマとなる物語はもっとすごい。ちょっとたそがれ気味で生気がない感じの初老の父を、青山勝がうまく演じている。
自分的にはもう一つの注目が、娘役を桟敷童子の大手忍がやっているところ。いつも、桟敷童子での迫力ある舞台を見ているせいか、今回の物語での役割には少し物足りない感じもした。だが、人間の理解できない行動の裏に隠されている心の動きを描き出している今回の物語は、やっぱり観てよかったと思う。
おまけ、ではないけれど、2作目の別役作品は、かんのひとみのさすがの演技が見られる。お見合いをテーマにした別役の不条理劇を初めて見たが、やっぱりくせになる面白さだ。