実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/03/28 (木) 14:00
座席1階
60歳の人気飲食店経営者が20歳以上も年が離れた女性と結婚。しかし、女性は生後3ヵ月の女の子と離婚届を残して蒸発してしまった。と、コリッチの宣伝文にも書いてあるようなシチュエーションで高齢シングルファザーは誕生する。だが、面白いのはここからだ。夜遅くまで働くパパやママの強い味方となっている夜間開業保育所の保育士、パパやママたちの人間関係やその人生を織り込んだ舞台に目が離せなくなる。
劇作家の山谷典子も子育て中ということで、リアリティーの高い舞台だ。しかし、そのリアリティーは綿密な取材に裏付けられている。夜間開業保育所(これは相当クオリティーの高い保育所なのだが)や、どんな人たちが子どもを預けているのかなど、きっちりネタを仕込んできたようだ。以前見たヤングケアラーの舞台よりも面白さはアップしていると思う。
シングルファザーを60代の昭和おじさんに設定したところが成功している。男は仕事にまい進し、配偶者の女性に育児を丸投げという昭和テイストは、離婚を突きつけた妻や周囲の女性たちに見事に打ち砕かれる。ただ、このおじさんの別の娘、既に中年の域に達しているのだが、この娘はおむつ替えや授乳などをお父さんにたたき込みながらも、「やはり小さいうちは母親が尽きっきりで育てるのが子どものため」という昭和の子育てに味方してくれる。この点もバランスが取れていていい。
クオリティーが高いと書いたのは、この保育所があくまで子どもを預けるパパママに寄り添い、その人生の一部を「業務外」のところまで踏み込んで支えるなど献身的なところだからだ。夜間保育所は子どもに晩ご飯を食べさせるが、お風呂まで入れてくれるなんて、当たり前ではない。
世の中変わってきたとはいえ、まだまだ子育てが女性に偏重となっている現状や、子どもが生まれてキャリアを断念する女性の姿も登場する。また、法改正で可能になろうとしている共同親権にも触れられている。
果たして、この60歳パパと娘の運命やいかに。あとは劇場で。間違いなく面白いので、お見逃しなく。
ただ、舞台転換にはもう一工夫ほしい。緊迫した場面が少し途切れるようなところがあった。