キラー・ジョー 公演情報 温泉ドラゴン「キラー・ジョー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    温泉ドラゴン『キラー・ジョー』トリプルキャスト:いわいのふ健さんの回を観劇。
    「底辺を生きる家族による、人生一発大逆転をかけた保険金殺人計画!!」という触れ込みや、暴力描写・性暴力描写・セクハラ描写・流血描写・火薬による銃の発砲などのトリガーアラートの発表から覚悟して劇場へ。
    客席に座り、舞台を見た第一印象は「劇場と合っているなあ」という感触。冒頭からグッと物語の中へと引き込まれ、観ながら解釈や見解などを考えることなく、ただただ目の前で起きる出来事を固唾を飲んで目で追っていた。「シーン」というより「出来事」という感じ。そういう意味で、「演劇を観た!」という感覚や余韻がとても強い作品で、そういった経験が久しぶりであったことにも気がついた。
    お話自体は本当に救いようがなく、一人として心を寄せられる人物がいない物語で、人に薦めるには勇気のある作品でもあったけれど、安全地帯からそう思い込んでいることそのものにも自分の暴力性をふと感じるような。そんな瞬間も押し寄せた観劇だった。
    何よりも劇団としての在り方が素晴らしい。前作『悼、灯、斉藤』から一転、同じ家族モノとはいえその振れ幅にまず驚き、メンバーに劇作家が複数いながら海外戯曲にも取り組むという果敢さ、過去作品がどれも似通うことなく、一つ一つ世界が独立している点においては演劇を上演する「劇団」というカンパニーとしてある種の理想を形にしているとも考えられるのではないだろうか。

    ネタバレBOX

    ラストにかけての乱闘シーンはまさに手加減、待った一切なしという感じで、相当にヘヴィー。中でもケンタッキーフライドチキンを用いた暴力シーン・食事シーンは凄まじく、思わず目を覆ってしまった。
    のだが、本当の意味でもっと目を覆いたくなったのは終演後のこと。私がほとんど無意識のような自然さで最寄りのケンタッキーに立ち寄ってしまっていたということだった。あんなに酷い景色を見たのに、あの時はあんな感情になったのに、今、私はあの彼女と同じチキンを食べているということに気づいた時、自分の中に宿っている暴力性に背中が冷えた。自分のことをジョーと何ら変わらぬサイコパスかもしれないと思ったくらいだった。書いていてもまた怖くなってきた。ただ、一言言い訳をするならば、暴力以前にケンタッキーの箱が出てきた時からふんわり食べたくはなっていた。いや、言い訳すればするほど恐ろしい。でも、このことも隠さず書いておきたかった。別日に観た知人にそのことを打ち明けたらきちんと驚かれ、ある意味安心をしていたのだが、また別日に観た家族に再び打ち明けたら、「食べたくなるよね!」と言われ、色んな意味でまた怖くなった。食べたくなってはいけない気がするのだ。だけど、食べたくなった。それが人間なのだという恐怖だった。これを書いた後に「満足度」に星を付けるのも含めて相当グロテスクな流れになってしまったので、満足度は割愛させていただきますが、何はともあれ、凄まじい演劇だった。俳優陣の集中力と身体能力、静から動に向かう精神との一体感が素晴らしかった。俳優の技を芸を見せつけられるような2時間。あと、(思わず途方に暮れてしまうような片付けを行う)制作スタッフさんの奔走も是非とも労いたい気持ちです!

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    2024/03/22 17:23

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