イノセント・ピープル 公演情報 CoRich舞台芸術!プロデュース「イノセント・ピープル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/03/16 (土) 14:00

     自分はこのサイトにコメントを書き込んだことはないのだが、この公演についてはコメントしておきたい。いまの日本の演劇界では、ある劇団に書き下ろされた戯曲が、他のカンパニーによって(修了公演などではなく)再演されることはあまりない。そのため、せっかくの力作もすぐに忘れられてしまう。こうした現状を改善すべく、CoRich舞台芸術!プロデュースが「名作リメイク」と銘打って、畑澤聖悟の2010年初演の戯曲を日澤雄介の演出で再演するという素晴らしい企画を立ててくれた。よく集められたと思うほど、キャストもスタッフも豪華である。この企画そのものを応援したく、CoRichの「観てきた!」に書き込みをする次第だ。
     まず日本人劇作家の作品なのに、まるで翻訳劇のように登場人物の大半がアメリカ人であるのが面白い。舞台で口にされる台詞は日本語だが、登場人物は英語を話しているという約束である。ここへ英語が達者でない日本人が入ってくるのだが、その登場の仕方が鮮烈だった。くどくどした言葉の説明なしに、日米関係が提示される。
     劇の内容は「原爆を作った男たちの65年」という副題どおりである。正直なところ、情報を盛り込みすぎで、物語の展開が性急になり、アメリカ側の登場人物の造型も単純化されすぎている印象を受ける。そのため、原爆開発への批判も類型に収まってしまう。だが、このような改善、改稿の余地が見えてきたのも再演されたからこその話だろう。また、ちょうどクリストファー・ノーランの『オッペンハイマー』が話題になっている時期に再演されたのも(評者は未見)時宜にかなっていた。
     公演パンフレットで日澤は「戯曲に真っ向から喧嘩を売ってる感じ」と書いているが、自分には敬意のある演出と見えた。主役を演じる山口馬木也が、65年に及ぶ長い物語の軸をブレずに務める。彼をはじめ、誰も観客に媚びた演技をしないのがいい。

    0

    2024/03/17 15:42

    3

    0

このページのQRコードです。

拡大