実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/02/19 (月)
駅前劇場にて劇団トラッシュマスターズ『掟』を観劇。
障がい者雇用の実態を描いた前作の『チョークで描く夢』の上演からまだ半年も経っていない中で、今回も3時間に迫る新作を上演。それも見事なまでのハイクオリティー。それだけでも単純に凄いと感じてしまうのですが、この国で実際に起きている様々な問題を、演劇を通して人々に伝え、考えさせるという一貫性のあるコンセプトが素晴らしいのです。個人的に、トラッシュマスターズさんは1年前の『入管収容所』を拝見して以降、すっかりお気に入り劇団の一つとなっており、出来る限り優先して観劇スケジュールを立てるようにしています。それくらい観る価値のある劇団という位置付けになっています。
今回は地方政治をテーマとした内容でした。あくまでも舞台作品ということで、100%を鵜呑みにすることは出来ないものの、過去に拝見した2作品がいずれも実際に起きたことがそのまま描かれていましたので、恐らく今回も実話そのものなのでしょう。観劇後にざっと調べてみたら、「首長と議会の対立がSNSで大きな話題となっている」「議員数は16人だが、一般質問では半分程度しか質問しない」「市の人口はここ10年で約5千人減った」など、まさに今回の舞台で描かれていたままの情報がありましたので、今、色々な感情が湧き出ているところです。ベテラン議員達への憤り、若手市長へのエール、市民への政治参加の訴えなど。。
劇団トラッシュマスターズさんの作品が凄いところは、観劇後にそのテーマについて深掘りしてみたくなる気持ちが芽生えるところかと思います。学校の授業で学ぶより、はるかに勉強になるような気がします。他人事ではなく、一人一人が問題意識を持ち、自分なりに考えるきっかけにする。その動きこそが、日本社会を変える第一歩になるのではないかと感じます。今回はとある一つの市の物語でしたが、同じような問題に直面している地方自治体は多くあると思います。そして、正直なところ、職務を果たしていない議員もそれなりに存在するのではないかと感じています。世の中色々な考えを持った人がいるのは当然ですが、その考えを相手に伝えることが出来なければ、誰もが納得する良い方向に向かっていくことはまず無理でしょうし、進化・発展は難しいと思います。「掟」は大事かもしれませんが、やはりきちんと話し合いが行われ、本気で意見をぶつけ合ってからでないと「掟」の立ち位置すら見失うのではないかと思います。
非常に重みのある深いテーマながら、色々と考えさせられた3時間でした。演劇で3時間となると若干長い感覚もありますが、トラッシュマスターズさんの作品はその長さを感じさせず、惹き付けられる作風なので、気付いたら3時間が過ぎているという感覚です。核となる人物こそいるものの、登場人物全員が印象に残るというのもなかなか稀な感覚です。重いテーマながらも随所に笑いを誘うシーンが盛り込まれており、映像を使ったシーンも良かったです。