満足度★★★
夏の演目としては一考の余地あり
今回は、武田尚浩と長男の武田祥照がシテ、ツレを勤める「松風」がメインディッシュ。
既に祥照も勤めた「菊慈童」を次男の崇史が舞った。
「能尚会」は以前は9月や12月に開いたこともあるが、最近は7月が続いている。もともと夏は観客の集中力が鈍る季節だけに重い演目は選ばないのが鉄則。この時期に大曲「松風」は観るほうもキツイ。「松風」を選ぶなら秋に開催すべきだと思った。親子で「松風」のシテ、ツレをというのが尚浩さんの悲願だったと聞くが、個人の思い入れより観客の鑑賞環境を考えていただきたかった。
まるで国文科の授業教材のように詳しい懇切丁寧な解説書をつけてくれたのはありがたい。これは、もともと、能になじみのない学友たちのために、若いご兄弟が執筆したもの。祥照くんは小学生のときから級友宛に手書きの解説付き公演案内を出していた熱心な人だった。何より、若者がいまどきこのように美しい日本語を使って解説を書けるなんて表彰ものだ。伝統の強みと言うか、敬語にもいやみがない。見習いたいものだと思う。
ご子息の大学受験を機にHPが長いこと未更新のまま放置されているが、この情報化時代、能楽も例外ではない。人気を集めている能楽師のHPは内容も充実している。最新情報を載せていないのは大いにマイナスだと思う。
また、外部客向けにアンケートも実施してほしい。