ザ・キャラクター 公演情報 NODA・MAP「ザ・キャラクター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    私たちは、忘れてしまう、私たちは、忘れないでいられるか
    うまい人たちの「軽々さ」が素晴らしい。
    舞台に引き込まれた。
    そして、そこでは、私たち(人間)の「本質」のようなものが示されたように思えたのだ。

    ネタバレBOX

    あいかわらずの言葉のチョイスに、思わずにんまりしてしまう。
    言葉遊びの中に紛れ込ませる意志。

    群舞とも言えるような、人々の動きが、このテーマに重なっていく。
    中でも、冨士山アネットの 長谷川寧さんのキレの良さが光る。

    古田新太さん、橋爪功さんの、軽々と演じているように見えてしまうところが、素晴らしい。安心感もある。
    それにつけても、宮沢りえさんの凄さはどうだろう。声に張りがあり、まっすぐ響く。

    この舞台の中心となるエピソードは、これだけの年月がたたないと扱えなかったのか、と改めて思う。
    しかし、そこには、救いもないし、総括すらもない。それは自分で考えろということなのか。

    初めて、例の宗教団体を見たのは、スピリチュアルが流行っていて、宗教(特に新しい宗教)がちょっとしたトレンドだった頃の、深夜の討論番組だった。そのときTVから感じた私の印象は、「思ったよりも、ちゃんとしているじゃないか」だったのだ(!)。
    舞台でも、同じように、ごく「普通」の書道教室があり、それが少しずつズレていくのだ。
    そして、いつも入り口は「普通」。その恐ろしさがある。

    人はエスカレートする。調子に乗るとも言う。祭り上げられると、言い直しも後戻りもできない。妄信的な「信者」がいればなおのことだ。どのような集団でも「妄信的な信者」の声は大きい。

    大勢でいると「声の大きい者」に、つい従ってしまうというのは、日本人的なことではないだろうか(いや、日本人だけではない、少なくともヨーロッパでも先の世紀では同じようなことが起こっていたはずだ)。
    「NO」どころか、単なる疑問でさえも差し挟むことができなくなっていく。「和」を乱さない人々なのだ、我々の多くは。

    この舞台では、あの事件を中心に据えているのだが、より深読みをすると、日本人そのものの特性(人間そのものの特性)のようなものを暴いているのではないだろうか。

    つまり、(たぶん)戦争に突き進んだ時代でも、それは「普通の顔」をしてやってきて、それを「「妄信する信者」の「大きな声」に、なんとなく従ってしまい、「NO」となかなか言えないまま、「後戻りできないところ」まで行ってしまったのではないだろうか。

    チョウソンハさん演じるジャーナリストは、筆1本で世界を変えると言っていたのだが、簡単に「あちら側」に取り込まれてしまっていた。
    これは戦争の時代のマスコミでもあり、今だって、マスコミの「声は大きい」。そして、我々は、たやすく「踊らされて」しまう。

    それは、戦争などの、大きな出来事だけのことではなく、学校や会社でも似たようなことが起こっているのではないだろうか。

    群舞に象徴されるような、個人ではない、大衆のようなモノ。それがいつのまにか、意見を一致させ、思い思いの動きを封じ込めていく。
    どこで「NO」言うべきだったのか。いつ自分の気持ち、考えを伝えるべきだったのか。その中にあっては、気がつかないことでもある。

    一点だけ気になったのは、この「書道教室」だった場所に集っていたのは、「心を病んだ人たち」だったのだが、それを起こしたのは、何もそういう人ではなく、「普通の人」だったのではないだろうか。
    ただし、「変えたい」という欲求だけは共通していたのだと思う。そういう「変えたい気持ち」が原動力となり、さらに加速させるための燃料となっていくのだ。
    つまり、それを起こしたのは、「普通の人だった」と強調することで、より大きなテーマが見えてくるように思えた。

    この舞台では、「あの事件」を「忘れない」というよりは、自分たちは「そういう特性のある人間なのだ」ということを「忘れない」ことこそが大切であると示しているように思えた。

    つまり、ラストに、薬品の入った袋を傘で刺すのは、自分なのかもしれないし、誰かに、そうさせるのが、大衆となった自分たちなのかもしれないということだ。
    そういう状況を作り出すことに、警戒心を持て、と言っているように聞こえた。

    だけど、いつも「忘れてしまう」のだ。

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    2010/07/15 07:43

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  • KAEさん

    コメントありがとうございます。

    >高校生の書いたアンケート、見てみたかったですね。

    そうですね。今回の舞台とあの事件とすぐに直結しないであろう世代の感想は聞いてみたいです。

    2010/07/30 06:58

    アキラ様

    この芝居に関しては、自分が観るまでは、どなたのネタバレも、開封せずにいました。
    昨日、ようやく観た後、アキラさんのネタバレを拝読し、今回は、ほぼ同意見です。
    特に、最後の6行は、全くもって同感致しました。

    そうなんですよね。状況と条件さえ揃えば、誰もがあの芝居の誰かになってしまいそうな危惧が、心に迫って、安穏としていられないから、とても恐怖を感じてしまいました。

    野田さんて、普通だと、あーいうリアルっぽいテレビの映像シーンの再現のような演出はしないのに、今回はあえてそれをして、他が紙とかの小道具で、リアルじゃなかったために、余計、あの何も知らないくせにやいやい笑いながらコメントする、ワイドショーの出演者の様子も、衝撃的でした。
    私達は、あの事件の時、確かに、あのテレビ番組のコメンテーターの同族でしたものね。

    本当に、いろいろ考えさせられる芝居だったと思います。
    高校生の書いたアンケート、見てみたかったですね。

    2010/07/29 11:20

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