十二月八日 公演情報 青☆組「十二月八日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    朗読劇の成功例である。
    朗読はどうしても演劇の迫力に及ばない。そこをどうすれば対抗できるか、をよく考えてある。
    まずは、企画がいい。
    太宰治のこの短編を見つけてきたことが第一。背中から手を伸ばして人の心をつかみそうな太宰の言葉のうまさをちょっとあざといくらいに巧みに編集している。80分。
    次に素材。朗読される内容に、現実にはいまは存在しない世界へ観客のイメージを飛ばす力がある。素材が今の現実を打つ力がある。しかも開戦月の十二月の公演。
    12月八日のこの日は、もう私は物心はついていたから、記憶にある。太宰の文章の力はその記憶へ帰っていかせるだけの力を持っている。大きな嘆息とともに、あぁ嫌な時代だったなぁ、と思うし、国民が集団幻想に踊らされるとどんな悲劇が待っているかは、今の人の多くは知ろうともしないが、私の世代はその解釈は人それぞれとしても、生身の骨身に染みて知っている。朗読という形式はそこへ素直に帰っていかせる回路として、演劇よりも力がある。
    朗読劇では、このような半分立ち芝居を混ぜた形で便宜的に処理することが多いが、この公演には必然性がある。音楽(歌)も同様。この朗読「劇」にとって、余計なものを周到に省いて独自の世界を作ろうとしている。一段高く平台を重ね、白布を覆った舞台と、周囲の椅子だけ舞台表現に手を抜いていない。時に象徴的にフリーズショットになるところも、あざといくらい決まっている。
    難をいえば、選択した原文部分はこれはこれでまとまっているが、今の人にわかりやすいおセンチなエピソードでまとめすぎているところだろうか。太宰を掘ればもう少し苦いところも出てくるはずである。
    俳優はみな柄をうまく生かされていて、この吉田小夏という作演出は初めて見たが、なかなかのタマである。五十隻くらいか、満席。

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    2023/12/21 10:14

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