セリフの美しさ。
とある九州の片田舎。
窯業の町。
戦争の波が荒く押し寄せ、
自由な焼き物が許されない時代になっていた。
そんなある日、
陶工としてはをはせている治平もとに、
奇妙な焼き物依頼がやってくる。
そこへ満洲へ行っていたという次女が帰国し、
良からぬ噂が……。
はたして、その真相が明らかになると、
戦争というものを実感することになっていくのだった。
三好十郎の骨太な戯曲。
戦争から遠く離れているような、
片田舎の市井の人々が、
ゆったりした時間の流れが変わっていくことに、
うすうす気づいていく。
また一方では、
その中心の人間が“陶工”という芸術家であるところが、
画一的になっていく“国民”の姿を浮き彫りにしていく。
手堅い作りで、
ドラマとして十分楽しめるが、
今、なぜ、三好十郎か、
という部分が希薄なため、
物足りなさが残る。