実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/11/30 (木) 14:00
座席1階
約2時間の間、舞台に視線がくぎ付けになった。久しぶりにこのような体験をした。マチネの舞台は昼食後でもあり、眠気を誘うもの。だが、この舞台は冒頭から目が離せない。気が付いたら、ラストシーンに向かって突っ走っていた。スタンディングオベーションがあってもおかしくない、強烈な拍手が舞台の成功を表していた。
桟敷童子の舞台はまず、美術だ。今作は森の保全という林業がテーマだけに、左右に深い森の木々を模したセットが組まれている。ここを「空師」と呼ばれる木の高所で作業をする職人を演じる俳優が軽業師よろしく演技をしながら登り降りする。男女は関係ない。板垣桃子、もりちえ、大手忍の看板女優たちの軽快な動きは目を見張るばかりだ。
冒頭の演出がハートをつかむ。音楽の選択もすばらしい。「ラ・カンパネラ」がこのように使われるとは想像もしなかった。
タイトルの「空ヲ喰ラウ」は一番天空に近いところで作業をする空師の人生を象徴する。空と一体化する、というイメージだ。極めて狭い山の頂上に立ち、両手で空を抱きしめる感じ。桟敷童子らしいタイトルだ。
物語は、空師の仕事を守ってきた二つの組をめぐって展開されていく。外部からの流入に抵抗感を持つ山村の生え抜きと、都会から「逃げて」来た若者。これらの人間関係や人生もこの舞台の見どころである。
舞台美術を堪能するだけでもこの劇団の舞台は見る価値があるとかつて書いた。今作は度肝を抜くような舞台美術ではないが、完成度は高い。劇場入口に模型が展示してあるのをお見逃しなく。今作も見ないと損するレベル。劇団員の奮闘に心から拍手を送りたい。