さすらう 公演情報 劇団BLUESTAXI「さすらう」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    2つの話が交差し、どのように繋がるのかといった興味を惹く巧さ。「さすらう」は漢字にすると<流離う>となり、なるほど 物語の展開そのものである。
    説明にある「母をなくした男、記憶をなくした男、愛をなくした男。失ったものを取り戻すため3人はさすらいの旅に出る」は、人生における過去を見つめることによって未来を切り拓く。その意味では、心の彷徨をも表しているようだ。

    3者三様の人生に、現代日本が抱える問題を反映させ、色々考えさせる 深みある公演。しかも、それを前面に出さずに、あくまで3人のさすらいと繋がりとして紡いでいるところに好感がもてる。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術はBOXを不規則に積み上げたような非対称の段差、その色調は白と黒という反対色(継ぎ接ぎといった印象)。
    冒頭、母から父の住所が書かれた紙を渡されバスを待っている知的障碍の男、拉致されやっとの思いで逃げてきた中年男が出会ったところから物語は始まる。また、妻と娘と3人で暮らしている初老の男、この2つの話を交差させ複雑な人生模様を紡ぎだす。この3人の男が説明にある さすらいの旅に出る ことになる。もっとも実際の旅というよりは心の彷徨といった感じだ。

    知的障碍の若い男は、母を亡くし親戚の家で育てられている。バス停で話していた母は亡霊といったところ。逃げてきた中年男は、母に捨てられ 児童養護施設で育ったため愛を知らない。そして初老の男は認知症で記憶を失いつつある。この3人が付かず離れず展開していく。演出は、どのような脈略で繋がるのか興味を惹かせつつ、笑いや暴力シーンを挿入し緩急をもたせ飽きさせない。

    知的障碍の男の(亡き)母と認知症の男は かつて結婚していたが、男のエゴのため別れた。そして今の妻と再婚して娘が生まれた。最近 認知症状が進み、現在と過去の記憶が混濁し前妻の名前や知的障碍の子の名前を呼ぶようになる。耐(堪)え切れなくなった家族の痛ましさ。一方、知的障碍の男も母が亡くなり、父が他の女性の再婚し孤独。また母に捨てられ児童養護施設育ちの男は、母に会いに行ったが惨い言葉を投げかけらる。

    それぞれの男は 救いようのない悲しい思いをしている。障碍者への対応、認知症患者と家族、ネグレスト問題…今の日本が抱える課題を3人の男に負わせ、それでも前向きに生きる、そんな後押しをする応援歌のよう。そして彼らを見守る女性ーー亡き母であり児童養護施設で一緒に育った妹のような女性、そして今の妻と娘ーー女性という別観点で描く慈愛が逆に支え 救いとなるような巧さ。

    物語のキーワードは「鳥」。劇中歌は、TVドラマ「池中玄太80キロ」の 挿入歌 「鳥の詩」で雰囲気にピッタリの選曲。そして<好き>とは ずっとそばにいたいこと等、珠玉の言葉(台詞)が心に残る。
    一方、卑小ではあるが、2つの話を繋ぐのが認知症の訪問介護士らしいが、どうして障碍者 男の父親と気づいたのだろうか。
    またラスト、障碍者と亡き母の しりとりゲームで終わっても余韻があったと思うが…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/11/12 23:15

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