風変わりなロマンス / 悲しみ 公演情報 劇團旅藝人「風変わりなロマンス / 悲しみ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    贅沢な2本立て
    初見の劇団です。テネシー・ウィリアムズとチェーホフの短篇2本立てなんて珍しい企画と思いましたが、大人向けのとても素敵な趣向でした。休憩10分挟んでの2時間。贅沢な内容でとっても得した気分です。

    ネタバレBOX

    テネシー・ ウィリアムズの「風変わりなロマンス」。
    幕開きにアパートの女主人(山下夕佳)がカーテンを開けるしぐさ、それだけで、テネシー・ ウィリアムズらしいけだるい空気が漂うのを感じた。
    鉄工の街にやってきた男(久野壱弘)は安アパートの1室を格安家賃で借りることになる。ラテン系の血を引くという女主人は、バラライカをかき鳴らしながら、男と少しだけ話をしていく。寝たきりの夫(劇には登場しない)と年老いた目の不自由な舅(嶋隆静)との暮らしに飽きている風情だ。男は人前ではカツラをかぶって別人格を装っていたが、女主人は男の正体を見破り、一人寝のさみしさを訴え、男を誘惑する。
    旅を続けてきた男は孤独で人間不信なのか、前の借主になついていた野良猫ニチボを可愛がり、一生懸命、ニチボーに話しかけていた。部屋をいったん解約した男がふたたび戻ってくると、新しい住人のボクサー(中山真)がいた。女主人はボクサーと関係を結んでいるらしく、2人は男を冷たく愚弄する。
    猫のニチボーの姿を探し求める男。外へ出て行くと舅が一緒に探している様子。窓から2人の様子をながめている女主人とボクサー。「目の見えない舅に探してもらっても、見つかりっこない」と冷笑していたが、男たちは猫をみつけたらしく、女主人の顔に笑みが浮かぶ。
    旅を続けた男と女のゆきずりの関係ははっきりとは描かれないが、閉塞感のある街での内に傷を秘めた人間同士の交わらない関係性が浮き彫りになる息苦しさがいかにもテネシー・ウィリアムズの世界。
    偶然にも最近カツラの出てくる芝居を3本立て続けに観たので、とても不思議な気分だった(笑)。髪の毛があるとないとでは、男性は本当に印象が変わるんだなぁと改めて感心(そういう芝居ではないでしょうが)。

    チェーホフの「悲しみ」。ベッド状のそりのような舞台装置。そりに病気で瀕死の女房マトリョーナ(横尾香代子)をくくりつけて医者のところに向かう初老の夫グリーシカ(石坂重二)。40年間、女房には苦労のかけどおしの悪い夫だった。
    もし、40年前に戻ってもう一度女房との人生をやり直せたら・・・。「幸せにしてやろう」と誓って結婚したはずの若き日の二人。それは回想であり、もう一度やり直したとしたらのシミュレーンドラマにも見える。
    結局、夫は妻を幸せにはしてやれず、妻は病死する。後悔しても遅い。妻は生き返ったりしない(旦那族必見!奥さんは大事にしましょう)。
    コロス(関根好香、志賀聖子、清水理沙、小笠原游大、田邊佳祐)が吹雪の効果音や、台詞、アカペラで歌唱などを担当し、すばらしい演出効果だった(脚本・演出・作曲は前嶋のの)。
    清水理沙の美しい歌声。電動夏子安置システムへの客演でよく観ていた志賀の別の一面も発見できた。


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    2010/06/28 19:47

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