不滅 公演情報 鵺的(ぬえてき)「不滅」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    感染。。。
    これは怪作!
    前作、「暗黒地帯」に続いての観劇となったが、前作同様、きわめて質の高い舞台であった。
    「次から次へと感染する悪意」、「真のサイコパスは誰か?」、「誰の中にもある殺意」など、たいへん深いテーマ性を有していた。

    ネタバレBOX

    舞台はとある観光地にあるホテルのテラス。

    不仲の父親と17歳と思われる娘。
    30代半ばのわけありのカップル。
    カップルの彼を執拗に追いかける男。
    興信所勤務の男。
    以上の6人が繰り広げる、悪意の連鎖と、それを断ち切ろうとする善意の攻防。

    親子の父親は、自分の不注意で、娘と双子であったもう一人の娘を、パチンコ中に熱中症で失ってしまう。そのことが原因で妻に逃げられ、男手ひとつで娘を育てるが、娘は父親に強い嫌悪感を抱く。また、娘は猫を殺したことをきっかけに、殺人に強い興味を抱く。

    カップルの彼は、十数年前に、バスジャックを起こし、乗客6人を次々とかけた次々の惨殺犯。
    彼女は、ボランティアをつうじて、彼と知りあい、彼の更正を信じて付き合う。

    バスジャック事件で、妻を殺された男はその後の全人生をかけて、彼を執拗に追いかけ、彼のすべてを否定する。

    興信所勤務の男は、日々のつまらない生活に満足できず、盗聴を趣味とする。

    これら、普通でない人々が出会ったときに起こる惨事を見事に描く。

    バスジャック犯の彼は、サイコパス気質で、自らの起こした罪に罪悪感を感じることなく、かつ、何事にも興味を持つことができず、惰性だけで生きる。
    そんな彼のことを知った娘は、彼に異様な興味を示し、神格化する。娘は、バスジャック犯の彼と出合ったことで、サイコパス気質を開花させてしまう。

    一方、興信所勤務の男は、バスジャック犯の男に、もう一度、世の中を騒然とさせる犯罪を二人で起こそうと持ちかける。自分は人殺しはできないので、プロデューサー役に徹するとの条件で。一見、普通そうに見える、この男にも、サイコパス気質が透けて見える。

    しかし、バスジャック犯の男は、この申し出を無碍もなく跳ね除ける。

    そんななか、ちょっと絡まれたという理由だけでいとも簡単に、娘はストーカーの男を殺す。

    その様子を見た、興信所勤務の男は、バスジャック犯の代わりに、娘を殺人鬼として育てようと決意。
    また、娘も、快楽殺人の魅力に取り付かれ、男ととも、行動を共にすることを決意。

    バスジャック犯の男は、こうした悪意が次々に感染することを防ぐために、娘を殺そうと試みるが、十数年経過したことで、昔のように無意味に人を殺すことができなくなっていた。


    この日をきっかけに、興信所の男と娘、バスジャック犯の男は、姿を消す。。。
    そして、1年後、残された父親と、バスジャック犯の恋人は何者かに呼び出される。

    そして、現場に現れたのは、興信所の男で、巷で話題の連続殺人は、自分とその協力者がプロデューサーとなり、実行犯は娘である。また、バスジャック犯の男は、その犯罪をやめさせることが目的なのだろうか、協力者を次々に殺し回っている厄介者だと、二人に告げる。

    そのことを聞いた二人は、これ以上の連鎖を断ち切るために、興信所の男を殺すことを決意。一見、殺意から最も遠いところにいた二人が殺人を犯すという悪意の連鎖はやはり感染を繰り返し。。。

    以上のように、悪意は次から次への疫病のように感染を繰り返す。しかし、悪意には、それぞれ意味があり、善意から発出されるものもあることが提示される。
    また、登場人物6人の行動の必然性を作家はうまく表現することで、単なるスプラッター作品に終わらせることなく、人間の罪と罰を我々に問うている。

    本作は紛れもなく、名作と言えよう。




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    2010/06/26 07:17

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