実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/10/04 (水) 19:00
座席1階
期待通りの力作だった。同郷同年、同じ年に同じ故郷で生まれ育った同級生という郷愁を誘う言葉が原発のゴミ・放射性廃棄物処理場誘致をめぐって凶器になるという物語だ。
人口減少に効果的な対策を打てない過疎の街。代々続いてきた米作りも耕作をする人が減り、希望を見いだせない。そんな故郷を、電力会社が札びらを片手に乗り込んでくる。巨額のカネで何とか地域振興を、とすがる町当局。ところが、住民投票で誘致が否決されるという場面から始まる。
現実世界でも、調査を受け入れただけで巨額資金が流れ込むという事実を前に、調査を受け入れた自治体もある。だがこの街ではまず、否決している。少し意外な展開なのだが、こうした思いが舞台が進むにつれて音を立てて崩れていく様子を見せつけられる。同郷同年、の言葉と共に。
演出は桟敷童子の東憲司だ。買ったチケットがたまたま最前列だったのだが、真っ黒に塗られたヒマワリ。かつて子どもや若者たちの声であふれていた街が誰もいなくなったということを象徴するように、壊れて捨てられたラジカセやギターが舞台最前にさりげなく置かれている。最前列に座らなければ気付かないような細かな舞台美術。まるで桟敷童子の舞台を見るようだ。
精神病院つばき荘で見せた舞台芸術だからこそできる問題意識を持ったリアリティ。今作でも、これを3人の俳優が見事に演じきって見せた。