実演鑑賞
満足度★★★★
広島出身女性作家の一昨年度の岸田戯曲賞受賞作品の再演である。昨年「どっか行け、くそたいぎいな我が人生」という母子共依存のドラマをここで見た。この岸田賞作品も父が事故急死してから一年の家族の微妙な変化を描いていて、大きくは生死の意味(ねこも含めて)を軸に広島の田舎の一族の動きを現代風俗の中に描いてユニークな家族ドラマになっている。
子供が出来ない長男夫婦の危機、レズビアンの関係がグズグズ続く長女、都会にいながら地方が捨てられない親子親族関係、家父長が亡くなったことでそれらの関係が微妙に動き出すところなど、新人らしからぬしたたかな旨ささである。
ほとんどノーセットの一幕モノで100分。照明の切り替えだけで、多くの場(シーン)を切り替えていく手法で、テンポは早いからシーンは80くらいはあるかんじだが、混乱はしない。疑問に思ったところも、次に出てきたときに、あぁそうかと納得することも多いが、やはり、人間関係は複雑すぎてこの手法ではわかりにくい。特に最初の三十分くらいまでは俳優になじみがないせいもあって、混乱する。
広島弁はほとんど演劇に登場しない方言でなじみがない。その情緒性を欠いたところがかえってこのドラマの冷え冷えとした家族関係の言葉としては良かったと思う。