エラーメッセージ 公演情報 tea for two「エラーメッセージ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    これはいったいどうしたことか・・・
    思わずわが目を疑うほどだった。これが昨年、珠玉の短篇集「ヒットパレード・スペシャル」を書いた人の作品とは思えず、とてもショックです。
    あの染み入るような人間描写のきめ細かさはまったく感じられない。
    3話オムニバスでそれぞれに「まちがい」があるのはフライヤー通り。1話、2話との接点が3話にありますが、ジグソー・パズルの最後のピースがパチンとはまらないのでスッキリしません。100ピースで完成するジグソー・パズルに15枚くらいのピースしか渡されず、「これで完成図を予想して楽しんでください」と言われているようです。
    ファインプレーやクリーンヒットを期待して野球を観にいったら、凡打や悪送球の山で、ひどく単調な試合運びの末、0対0で終わったみたいな気分である。
    私が薦めたいと思う芝居とは今回、まったく違っていました。
    大根健一ファンとしてはこの作品で判断されるにはしのびず、でも、大人の琴線に触れる作品を送り出している優れた作家にはちがいなく、これからも見続けたいと思っています。次回作に期待します。

    ネタバレBOX

    冒頭と、話の間の場面転換に出演者全員が椅子とりゲームをして、このオムニバスの内容が微妙に絡み合っていることを示唆しているけれど、実際にはそれほど「話の妙」がないのが残念。結論から言うと第1話が一番おもしろく、2話以降が単調で、いつエンジンがかかって面白くなるのかと待っていたがいっこうに面白くならず、時間が長く感じられた。
    第1話は、不安を抱えて診察を受ける患者(湯澤千佳)と、ウソをつくと2度同じ言葉を繰り返す癖のある医師(大岡伸次)、自らもガン検査の結果を待っている看護師(木戸雅美)。
    この看護師、勤務中もヘッドフォンをつけて子供の運動会のダンスの練習に余念がない。看護師が医師の癖を患者に教えたため、患者はどんどん不安になる。ウソ発見器代わりに看護師が「医師が英国にいってポール・マッカートニーに遭遇したときの話」について医師に質問し、ウソと癖が合致するのを患者に納得させようとするのが可笑しい。看護師のほうは結局ガンがみつかり、医師の友人で大学の研究室に残った近藤という準教授のいる研究室の若手研究者が中心に発見した画期的治療法を受けるように看護師を説得する。この段階で、看護師は「医師がウソをつくとき、右手の指を動かす癖があること」を指摘し、混乱する。大岡は昔から出てくるだけで何かやってくれるのではと期待させる人。木戸の看護師も存在感があり、2人の掛け合いが面白い。
    「血圧をはかる腕は左右どちらでも」と看護師が言うが、ふつうは「右手」と言われるが・・・。
    第2話は無実を主張するが老女殺人事件の容疑者にされてしまった主婦(西尾早智子)と職場結婚した年下の夫(長内那由多)、その同級生の弁護士(栂村年宣)の話。拘置所での面会場面が実際なら空気穴がたくさんあいた窓が2人の間にあり、監視官が1人付くが、装置上それがないため、まるで法律事務所で相談を受けているようなリラックスムードなのが気になった。
    弁護士は妻が夫からの手紙がほしいとの要望を伝えて夫に手紙を書かせるが、夫の家で紛失してしまう(ここが少々わざとらしい)。夫からかつてたくさんの手紙をもらっていた弁護士はやむなく夫の筆跡をまねて手紙を書き、妻に渡すが、「初デートの思い出」を夫が弁護士に見栄をはって嘘をついて書いていたため、弁護士の手紙に妻は怒ってしまう。面会に来た夫と妻がアリバイの裏づけとなる銀行通帳の保管場所をめぐって口論になり、妻は夫を困らせようと咄嗟に「私が殺しました」と自供してしまう。実際、これだけ大声でやりあったら面会を中止されてしまうだろう。それに、やってもいない殺人容疑を夫婦喧嘩の腹いせで自供したりしないと思う。劇中、夫が家に帰って、たぶん妻が言っていた「春物のスーツ類をクリーニングに出す」ため用意していると、紛失した手紙が出てくる。妻がなぜ容疑者にされたかも描いてほしかった。
    第3話は、医学部の地味な若手研究者(塚原美穂)と2話の殺人事件の容疑者とテロップで誤報されてしまった編集者(渡邊亜希子)のインタビューをそれぞれ依頼するTV局員(小森健彰)。
    研究者は1話の近藤の研究室にいる設定のようだが人違いだったようで、編集者のほうは誤報の汚名を晴らすためのインタビューで、単に現場の野次馬ではなく、被害者の老女と深く関わりがあったことが炙り出されてしまう。
    若手研究者のインタビューが1話とのこじつけめいていて、どうして人違いに至ったか理由がわからず不自然。編集者が真犯人と思わせたところで話が完結してしまい、中途半端な結末がスッキリしない。編集者に話を絞ったほうがよかったように思えた。塚原も渡邊も好演しているだけに残念。
    全編を終えて、「え?あんなに時間かけてこれで終わり?」と唖然としてしまった。
    生意気なようですが、大根氏はユーモアのセンスも人物の心理をていねいに描く腕も持っている作家なのだから、凝った仕掛けを考えず、直球勝負の作品のほうが自分は好みです。今回の作品は長所が死んでしまっているように思えました。

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    2010/06/19 12:05

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