実演鑑賞
面白い、お薦め。
当日パンフにも記されているが、「天召し」は三回目の上演で 全てを観させてもらった。「将棋」の孤独で厳しい世界観、一方 井保三兎氏が演じる田島(棋士 森信雄)の仄々と和ませる雰囲気が重苦しく感じさせない。その絶妙なバランス感覚が良い。そして この作品にはモデルが沢山いると。賭け将棋で生計を立てた池田(新宿の殺し屋・プロ殺しなどの異名がある小池重明)、智(棋士 村山聖 追贈九段)を義理の親子として繋ぎドラマ化する。池田の破天荒・破滅型の生活、智のネフローゼ症候群に悩まされながらも、直向きにプロ棋士を目指すという二人の男の生き様ー将棋という勝負(真剣)に魅入らされた人生劇場。
モデルになった人たちはネット情報にあり、その人物像を彷彿させるような描き方だが、それらの人物をいかに関係付けて舞台化するか。自分の記憶では、この作品は「将棋シリーズ」の第1作で、以降数々の将棋を題材にした秀作を上演している。上演前から孤独で厳しい世界であることを強調したような雰囲気が漂う。他の将棋を題材にした作品は、上演前には将棋初心者向けの大盤解説をしていたが…。シリーズ第1作には色々な思いや要素が込められており 特別なのかもしれない。
時代や状況の変化は、小説家 木下(団 鬼六)がナレーションのように説明するが、それでも明確にならない。物語として時代(時間)の流れを大切にしているようだが、違和感なく展開出来ていれば木下の状況説明は省略しても良いような。
そして智だけではなく 他の弟子育成、さらに女性にも将棋を指導(女流棋士に)する田島の姿。また台詞にもあったが、将来コンピューターによって絶対負けないプログラム将棋云々、を通して時代を超越した現代性をも垣間見せる。
第35回池袋演劇祭参加作品(★評価は演劇祭授賞式後)。
(上演時間2時間 途中休憩なし) 追記予定
2023/10/02 06:39
「天召し」ご観劇いただきありがとうございます!
ご感想にもいただいているように将棋シリーズの中で唯一開演前の初心者講座をやらない作品となっています。
他の将棋シリーズとはまた違った雰囲気を味わっていただけたなら嬉しいです!