塔をたてる 公演情報 劇団肋骨蜜柑同好会「塔をたてる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    〔第二の塔〕『象牙の塔(がんばったがダメ)』

    筋肉少女帯の『猿の左手 象牙の塔』と大槻ケンヂのソロ・プロジェクト、UNDERGROUND SEARCHLIEの『がんばったがダメ』を想起させるタイトル。

    舞台は劇団の作った架空都市、田瓶(たがめ)市。群馬県と山梨県の県境にあるという。その地を代表する文士、清田洞爺(とうや)の昭和22年、35歳の日々を描く。無論架空の人物である不遇の作家の物語。妄想の町で妄想の人物達が悩み苦しみ足掻き、声を上げて泣く。何をしても駄目で、何もしなくても駄目。鋭角に削り通した鉛筆を握っては何かを書き続けねばならない。文学なんて大それたものでは決してない。未来の会う事もない誰かに送る妄想の手紙。

    BUCK-TICK「六月の沖縄」
     手紙を君に送るよ それは届く事はないけど
     もしいいなら僕に返事を それは多分読めないけど おお

    両切り煙草に燐寸。狭い借家。作家を演ずるは水口昂之氏。そこに訪ねて来る旧友の出版部の男に藤本悠希氏。突然押し掛ける来訪者に杉田のぞみさん、背が高い(182cm!)。内縁の妻に寺園七海さん。飼い犬のアヲに横室彩紀(あき)さん。この女優が実に良かった。

    味わい深い不遇の文士もの。ラストが好き。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    横室彩紀さんの役は犬であり、寺園七海さんが養女にした薫子でもある。何故か作家は少女を無視し、一切会話を交わそうとはしなかった。最後に彼女は作家をなじり罵倒し問い詰める。それは火の鳥が猿田に天命を告げるよう。小説という呪いをかけられた者は一生小説で苦しみ足掻き続けなければならない。苦しんで苦しんで苦しんだその先に何があるのか?きっと何もない。全ての表現者の傍らに横室彩紀さんが居てくれれば。

    寺園七海さんの役は竹中直人の『119』の鈴木京香をイメージした。最後の別れのシーン。

    物足りないのはシチュエーションやキャラクターに立ち込める既視感。『風立ちぬ』みたいに登場人物の設定に凝って欲しい。語りたいテーマ以外の書き込みが足らない。実は要らない情報こそがその世界の手触りとなる。

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    2023/09/17 09:11

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