「視野」 公演情報 reset-N「「視野」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    視野の先に広がる「虚」の空間
    床に座る。
    アートスクエアの天井は高い。
    蛍光灯がいくつも縦に下げられている。

    俳優の上の空間が広く空く。

    ネタバレBOX

    観客の視野には、俳優の上に広がる「空間」が「広がる」、というよりは、舞台が進行するにつれて「重くのしかかって」くる。

    「虚」の重さ。

    スラップスティックと劇団側が表現する、3つのエピソードが繰り広げられる。

    (たぶん)何かに絶望している女たち。それに寄り添う男たち。
    男たちは、女のことを理解しようと思っているというよりは、自分のことしか考えてないように思う。自己愛的な。

    女と男には会話はあるが、コミュニケーションは断絶している。
    そこへの「絶望」でもあろう。

    3つのエピソードは、舞台の上に広がる「虚」の中に立ち上り、静かに消えていく。
    交わることはない。

    正直に告白すると、最初はクッションもあるし、好きなところに座れるのだから、通常の桟敷席とは異なり、足も伸ばせるし、なんて思っていたが、やはり、途中からお尻が痛くなってきた。静かすぎる空間なので、身体をあまりもぞもぞともできず、お尻と腰の苦痛は高まるばかり。
    したがって、苦痛の中で、後半、台詞に集中できなかった。
    (4つぐらいイス席も用意されていたが、さすがに上演中は移動はできないし)

    それと、意図されていたとは言え、ライトの高さが辛い。目に直接光が入ってまぶしい。

    観客の「視野」をコントロールしたいがために、床に座らせることを企画したのだと思うが、あの空間の広さで言えば、イスの高さがあったとしても同じだったのではないだろうか。
    頭で考えすぎの結果が、苦痛なのではしょうがないのではないか。

    苦痛も「込み」の演劇ならば、それはそれでアリだったかもしれないが、やっぱり苦痛はイヤだし、演技と台詞には集中したいものだ。

    全体的にスタイリッシュ。
    役者の雰囲気も、どこか胸を張って、鼻をツンと上にしたような感じさえ受ける。
    女優の切羽詰まった演技は素晴らしいと思った。声を張らない緊張感があり、迫ってくるものがある。特に白い紙を持って佇む女の。
    また、宗教に入り込みそうな男に向かって叫ぶ女の声はきつい。それがいい(この宗教のエピソードは好きだ)。


    言葉をまるでだじゃれのように繰り返す女(これって、お笑いのジョイマンではないか、と思ってしまった)と男のエピソードがあったが、これにはまったく共感ができなかった。意味が不明すぎる。ラストの刃傷沙汰も、ありきたりでつまらない。というより思考を停止させているようにすら思えた。
    こんなスタイリッシュなのに、出刃? なのだ。
    まあ「殺意と一緒に用意した出刃」なのだろうが、どうも悪いギャグのようだ。

    また、ライブハウスのように、飲み物と食べ物の用意がしてある。
    ただし、あの舞台の雰囲気では、食べながらどころか、飲みながら見ることはできない。
    食べたり飲んだりは、開演前に、あるいは終演後に、という意味であれば、床に座らせて飲み食いしろと言うのはどうかと思う。
    野外の芝生の上ならばともかく、クッションがあるというものの、床に座って、おしゃれな食事なんてとる気がしない。

    アイデアとしてはわかるのだが、実際の観客のことを考えているとは思えない。
    飲食をさせるならば、イスと簡単でもいいので、机ぐらいは欲しい。
    コンビニの前に座り込んで飲み食いする世代だけが観客ではないのだから。
    「飲食」は「ホスピタリティ」の意図と、会場に「アサヒアートスクエア」を使うという縛り(たぶん)から来ていて、観客を「床に座らせ」、「絶望を見せたかった」という意図があったとは思えないし。

    そして、この部分も含めて、演劇なのだから、きちんと神経を行き渡らせるべきだと思う。

    意図と企画には賛同するが、話の結びと、苦痛には賛同できない。星を付けると限りなく3つに近い。
    ただし、気になった劇団となったので、(ちょっと偉そうに言うと)やっぱり4つとした。

    4

    2010/06/15 07:48

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  • KAEさん

    >私も、もし行ったら、きっとアキラさんと同じ判断をして、桟敷に座り、途中で動けず、後悔したような気がします。

    おっしゃるとおりです。実際イス席をお申し出になった方はいらっしゃらなかったようですし、4つしかないイス席も、劇団側が「イス席空いてますよ」とアナウンスしても、3つ空いてました。

    >タバコの煙が心配になって

    それはよくわかります。「タバコを使いますので、お嫌な方は後ろへ」というアナウンスをしてくれる劇団もありますし、「タバコを吸うシーンがありますが、本物のタバコではなく薬(たぶん?)です」と言って安心させてくれる劇団もありました。

    >劇団の皆さんには、観客の観劇状況にも、もう少し配慮をして頂けたら、ありがたいなあと思います。

    同感です。

    桟敷席は雰囲気が楽しいこともありますが、歳と体型的(笑)に私はあまり座りたくありません。桟敷席の多いだろう舞台や劇場には、自然と足が遠のきます。

    2010/06/16 16:09

    アキラ様

    なるほど、最初から選択さえすれば、椅子席に座ることは可能だったのですね。
    でも、私も、もし行ったら、きっとアキラさんと同じ判断をして、桟敷に座り、途中で動けず、後悔したような気がします。
    先日、タカハを観に行った時、最前列で、タバコの煙が心配になって、席の交換を申し出たら、最後列の、ビール箱的な間に合わせの椅子に座る羽目になり、ずっと足の置き場に苦慮して、芝居に集中できない憂き目を見たので、おいそれと、席の移動もしない方が無難な時もありますしね。

    劇団の皆さんには、観客の観劇状況にも、もう少し配慮をして頂けたら、ありがたいなあと思います。

    2010/06/16 13:55

    KAEさん

    コメントありがとうございます。

    劇団側から開演前に、床に座るのがきつい方にはイスを用意します、というアナウンスがありました。ただし、「観てきた」にも書いたように、通常の桟敷席とは違い、大丈夫かな、と思ったので、イスをお願いしませんでした。
    また、別に4つぐらいのイスもありましたが、座っている人は1人ぐらいでした。
    途中からイス席への移動がしずらかったので、私はそのまま床に座ってました。

    ですから、普通に着席して観劇できたんです。

    2010/06/16 01:06

    アキラ様

    あー、やはりそうでしたか?座り心地。

    実は、この劇団、一度観てみたいと思っていながら、何故かチケットを買う決断に至らず、皆様のレビュー次第で、行くことにしようと思っていました。
    そうしたら、どなたかのレビューで、桟敷オンリーとわかり、これは腰痛持ちは止めた方が無難かなと思っていたところでした。
    アキラさんでもお辛かったのなら、私は止めて正解でしたね。
    内容自体は、興味深い感じなのに、それでは余計残念ですね。

    30代の頃は、コクーン歌舞伎で、桟敷の最前列を取って頂き、学校の役員仲間と楽しんで観ていられましたが、最近は、事務所に、椅子席限定を申し込んでいます。皆、桟敷は辛い年齢になってしまいましたから…。

    小劇場も、我々のような高齢ファンも多くなったのですから、せめて、事前に、全席桟敷ですという注意書きくらい、フライヤーやHPで、告知して頂きたいなあと思います。

    アキラさんのコメントのお陰で、腰痛悪化せずに済みました。ありがとうございました。

    2010/06/15 16:53

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