親の顔が見たい 公演情報 劇団昴「親の顔が見たい」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/09/01 (金) 14:00

    座席1階

    2008年に畑澤聖悟が劇団昴に書き下ろし、韓国でも上演され映画にもなったそうだ。畑澤の劇団・渡辺源四郎商店でも上演した。そんな有名作だが見るのは初めて。劇団昴の再演、お帰りなさい公演といったところだろうか。さすが現役の教師だけあって、迫真の戯曲。約2時間の上演で、客席は水を打ったように静まり返って舞台を食い入るように見つめていた。何という秀作だ。

    客席をわしづかみにする原動力は、何と言ってもリアリティだろう。お安くない授業料を取る名門私立中学の教室で、女子生徒が首つり自殺をした。夕方、学校に届いた遺書のような手紙に、5人の加害生徒の名前が書いてあり、親たちが緊急に呼び出される。舞台は、わが子がいじめに関わったと認めたくない親たちの壮絶な会話劇である。
    職業もバラバラ。シングルマザーあり、事情があって孫を育てている祖父母もいる。会話からはそれぞれの家庭の深刻な内情も垣間見えて、いじめ事件と複雑に絡み合っていく。
    当初、いじめなどはなく女子生徒が勝手に死んだと主張する声や、いじめがあったとしても自分の子は関係ないと訴える声が出る。いじめ事件などが表に出れば名門私学の名に傷がつくと、先生からかすめ取った被害生徒の遺書を燃やしてしまう場面も出て、驚かされる。
    だが、その後の展開は想像を絶する物語だ。

    パンフレットによると、畑澤は2006年に実際に福岡県で起きた中二の男子生徒のいじめ自殺をきっかけに、この物語を書いた。「せいせいした」「別にあいつがおらんでも、何も変わらん」という加害生徒たちの態度に衝撃を受けたという。今作では、舞台は親たちが集まった学校の会議室で、加害生徒は別室にいるという設定で出てこない。だが、先生のせりふで「早く帰りたい」「おなかすいた、ピザとって」などと反省などまったくしていない様子も出てきて、恐ろしさが募る。最後の方の独白で、一人の女子生徒がいじめに参加したことを悔い、抜けたいと思うが抜けられないという姿が出てきて、少しだけホッとする。
    いじめの中身は苛烈である。だが、こうしたいじめは現実にはたくさんあり、教師にも親の目にもかからず埋もれてしまっているのだろう。被害者はたった一人で苦しみ、死の淵に追いやられている子は少なくないと思われる。この舞台は、こんな現実を激しく主張している。

    子どもたちに見せたい舞台。(客席は圧倒的に高齢者が多かった)
    見ないと、損するかも。

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    2023/09/01 19:07

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