実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/07/25 (火) 14:00
座席1階
医師から劇作家に転身したミハイル・ブルガーコフの評伝劇。スターリンの評伝劇を書くように頼まれてからの人生を描いた。力作ではある。だが、やや難解でもあった。
何せ、自分に反対するものはすべて粛正してしまう独裁者だ。劇中ではスターリン自身は出てこないが、当時の息苦しさは十分に伝わってくる。表現の自由、言論の自由がない世の中というのは、芸術があったとしてもちっとも楽しくない生活であるというのはよく分かる。
そんな中で、革命家である前は詩人であったというスターリンの詩を、世の中を明るく照らす力としてあでやかな花束に託して舞台で表現してみせた。役者たちによるこの表現力が卓越している。
この劇作家の思いを反転させるような役割を果たす「犬」の存在は面白い。苦悩や喜びなど胸の内を叫ぶように表現しながら舞台を引っ張っていく。ただ、せりふにのめり込んでいくと頭の回転が追いつかないようにも感じた。百年近く前のソ連という舞台だからスッと頭に入ってこなかったのか。