THE WILDEST DREAM 公演情報 GROUP THEATRE「THE WILDEST DREAM」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     Bキャストを拝見。ちょっと変わったテイストの作品だ。何はともあれ、演劇空間の現実を通して、戦争の持つ内実に、そして人間という生き物の靭さと弱さに思いを馳せて欲しい。

    ネタバレBOX

    ウクライナのことがサブタイトルとして付いている以上シリアスな作品と言ってよかろうとの事前感覚は裏切られなかったが、物語が展開するのは実際には杉原家の居間と正面窓の向こう側の空間である。
     キエフにある世界遺産を構成する聖ソフィア大聖堂・ペチェールスカヤ大修道院・ベレストヴォの救世主聖堂のうち最古の建築物、聖ソフィア大聖堂に“不滅の壁のマリア”と呼ばれるモザイク画が残されている。不滅の壁のマリアと呼ばれるのはモンゴル侵攻の際にも破壊されずに残ったことからこう呼ばれているという。因みに不滅の壁のマリアは177色、300万個のガラス石を用いて作られている。今作の重要なモチーフに“不滅のマリア像”が関わるのは、次男結太出産の折病院へ向かう救急車の中で同乗していた夫、杉原修司と長男、修に対し妻、結子が「次男が生まれたらこのお揃いのペンダントを兄弟にプレゼントする」と言っていたことが遺言になったからである。そしてこのペンダントには、不滅の壁のマリアが描かれていた。事故の描写があり場転。
     第2場では約20年後の世界が描かれる。長男修は、所謂引き籠り。様々な人々が訪ねて来てもシカトシカトのオンパレードだ。宅配業者が配送品受け取りのサインを頼んでもシカトである。配送業者は仕方なく、窓外の空間で街頭芸人のようにギターを抱え歌を歌っていた白杖の初老の芸人に声を掛けサインを貰う、といった有様。即ち自分でできることも一切せず、父が寛大であることに付け込んで甘えに甘え、甘えている自分自身を疑う程度のこともせず自分自身に甘え、剰えその卑怯と向き合うことは愚か居直った表層の論理を盾に屁理屈を並べ立てる卑怯を絵に描いて壁に貼り付けたような人物である。父は現在、社会的弱者をケアする仕事で代表を務め、スタッフの矢島大助(実は母が亡くなった救急車の人身事故は矢島が飛び降り自殺を敢行、着地したのが救急車であったという因縁があった、その矢島を「良く生きていてくれた」と喜び励まし新就職先として自分の営む団体職員として雇い入れた)と共にてんやわんやの状態である。そして母結子は亡くなったものの無事、誕生した結太は一部上場の証券会社に入って海外のリサーチ等に係る重要なポジションで活躍中である。
     今作は、この捻れた長男修が、結太が休職しウクライナへ旅立ったことを巡り、本当は弟を愛し心懸かりでならないのに、もう二度と会えぬかも知れぬ弟の旅立ちに喧嘩別れをしたことへの心の蟠りから、ウクライナ現地へ矢島に叩き起こされて連れて行かれる夢を通してウクライナ、ブチャでのウクライナ人の日々を体験、命を懸けて地雷原の只中をただ自分より弱い孤児たちに食事を運ぶ為、既に虐殺され葬られた無辜の民の墓が荒らされたのを修復する為、人々に勇気を与える為輝く黄色に身を焦がすような向日葵の花を手に入れる為、廃墟になった家に直した掛時計を掛ける為等に出掛けてゆく人々に救われ、自分を連れ出してくれた矢島が瀕死の重傷を負いブチャの避難所に居た看護婦が血清を取りに行く為矢張り地雷原の只中を出掛けてゆくこと総てに悪態をつく。その時、ウクライナ兵士の出産間近の妻が先に約束した通りに避難所に夫に抱えられて担ぎ込まれた。然し看護師は既に出発しており、避難所は敵の襲撃を受け、兵士は応戦の為敵を避難所から遠ざけそちらで戦っている。兵士の身重な妻と修二人だけになったとき、不滅の壁のマリアが起こした奇蹟か!? 兵士の妻は修の亡き母へと変貌、修に愛を注ぎ、他者への愛の注ぎ方を教えた。
     終盤は読者のイマジネーションに任せるが、特別出演でユウサミイさんという方が出ていて、ギターと歌唱でこの夢と現が交差し綯交ぜになり、心と魂に深く人としての変革を齎す物語りの位相を、極めて自然に介在し中継する役割を果たしているのが印象的である。ギターは上手いし、歌も上手い。声がとても良く、リズム感も良い。戦争は遠く離れた異世界のことではない、という臨場感にこの作品を観て是非とも近づいて頂きたい。

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    2023/07/14 02:12

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  • 皆さま
    ハンダラです。
    良い作品を創っていらっしゃる以上、高評価は当然のこと。
    自分に大した力は無いものの応援し続けたいと思います。
    今後ともよろしくお願いします。楽迄無事駆け抜けられるよう
    祈ります。
                              机下

    2023/07/15 03:09

    ハンダラ様

    いつも当劇団を気にかけてくださり、心より感謝申し上げます。これからもART CAN CHANGE THE WORLDという設立理念に恥じない作品を頑張って創ってまいりますので、引き続き温かく見守っていただけたら幸いです。

    GROUP THEATRE 主宰 梶原涼晴

    2023/07/14 11:31

    皆さま
    遅くなって申し訳ありません、アップしました。ご笑覧ください。
                           ハンダラ 拝

    2023/07/14 02:13

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