無法地帯 公演情報 藤原たまえプロデュース「無法地帯」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    無法地帯ならぬ無常世界のような…訳アリの おっさんたちが住むシェアハウス<双葉荘>での日常を面白可笑しく描いた物語。因みに登場するのは全員おっさんで、色気のあるシーンがあるとすれば映像か。

    このシェアハウスに新入りが来た時の感想を 心の中で、「なんて くだらない、何の教訓もない」といったことを呟く。当日パンフに脚本・演出の山下平祐氏が「観劇後、皆様のお胸には何も残らないかもしれません」と。しかし、この手の話はシェアハウスの外、つまり社会(世間)との関係を描くことによって観客の心に何らかの爪痕を残そうとするが、公演では、ハウス内における人間関係だけで綴る。しかも 個々人の背景は深堀せず、今という瞬間だけを切り取り 〈生きている〉 として観せる。背景=訳アリという過去に縛られず生きたいという 思いがあるのかも知れない。

    先のパンフには続きがあり「しかしその『何も残らなさ』もまた、男性のみのお芝居の『らしさ』」と。シェアハウスという狭い空間、訳アリの内容はそれぞれ違うが、それでもマウントを取りたがる滑稽さ。そこに愛すべき おっさんの虚勢と哀愁が垣間見え、不思議とジーンとくる。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央奥にキッチン、手前は応接セットが置かれている。上手には二階へ行く階段や本棚、下手は玄関に通じる通路や鑑賞植物がある。全体的に くすんだ壁が中古住宅をイメージさせる。劇中使用するスクリーンが上り下りする。この一軒家は、ここに住んでいる訳アリおっさん達と関わりのある篤志家の弁護士が低家賃で貸している。

    訳アリおっさんとは、万引き、窃盗、住居不法侵入などの犯罪を犯した者で、いわゆる前科者である。今は更生したようで地道に働いている者、ぶらぶら怠惰を貪っている者など一様ではない。冒頭は、若い女性との出会いを求めるため、彼女たちのレタームービーを見て燥ぐところから始まる。彼女たちの性格云々といった他愛ないことでマウントを取り合う。

    物語では、おっさん達の前科者になった経緯などは深堀せず、その犯行という事実だけを語る。そこには過去を振り返らず今日という日を生きる。暮らしていくとは、その日々の繰り返しで、芝居のように劇的な事が起きるわけではない。その意味では現実を見据えた日常<会話>劇のようだ。淡々とした日常が崩れたのは、痴漢行為で捕まったおっさんが、自分は無実だと言い続けていたが…。些細な言い争い、小さな諍いはあるが、何となく和気あいあいとした仲に不信感、そして亀裂が生じる。あっという間の崩壊は、家族と違って乾いた というか あっさりと結末を迎える。

    YouTube配信を行うため、皆で曲「あの素晴らしい愛をもう一度」を三番まで歌うシーンに おっさんの愛らしさ?と悲哀が垣間見える。台詞にない言葉が聞こえるような演技、そこにおっさん=”ベテラン男優陣”の凄みを観るような。だからこそ滋味溢れるといった印象が残る。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/07/07 18:20

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