アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】 公演情報 モダンスイマーズ「アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    素晴しいの一言。文句なし。大変豊かな2時間40分を過ごせた。蓬莱竜太の、人物のコンプレックスをグイっとさらけ出す戯曲・演出がベースにありつつ、本作の最大の見どころは、若い俳優たち(中に年配の俳優も2人ほど)の全力投球の演技だろう。たとえ有名俳優でなくても、力のある若手が揃うと、舞台はとんでもない大化けをすることがある。その一つだった。27人、それぞれが役のイメージに合ったキャストで、紙に書かれただけのセリフに本当に血を通わせていた。台本はたたき台に過ぎないと、舞台に上げて俳優の血肉にしてこそ本物と、改めて感じた。

    在日を母に持つ双子の妹ゲン(藤松祥子)の、まっすぐな性格の弾ける明るさ、対照的な姉・ソジン(瑞生桜子)のそっけなさ。ゲンに恋したタバチ(田原靖子)の中性的たたずまいも自然だった(放送室に立てこもっての「私は女です。私は女です」の叫びは、脈絡を超えた迫力がある)。

    卓球3人組(大西遵。久保田響介、小口隼也)の、意地の張り合いはコミカルなだけでない、若さのぶつかり合いを感じた。バカばっかりやってる三人組(蒲原紳之助、榎本純、江原パジャマ)は、馬鹿っぷりが徹底していて弛緩するところがない。舞台に出た瞬間からはけるところまで、全くスキがなかった(ほかの俳優もそうだが、この三人、テンション高いだけに特に強く感じた)。
    ギター(笠原崇志)カメラ(大河原恵)、漫画(名村辰)のオタク三人組の登山のシークエンスは笑えた。名村の目の座ったオタクぶりが堂に入っていた。歌手志望の伊藤ナツキの歌がうまく、恋もかわいらしくて、輝いていた。年配俳優の用務員・吉岡あきこは、引きこもりの息子にかける電話が、せつなくてかわいげがあった。
    ませた女子3人組(坂東希、伊藤麗、堺小春)の、いじめ・いじめられの隠微な関係をリアルに演じて、痛々しかった。全員の名前を書ききれないが、オムニバス的な群像劇でそれぞれの出番は少ないのに、その出番の一人一人がとにかく光っていて、リアルで、本当に面白かった。

    音楽(「ツアラトウストラかく語りき」や「抱きしめてくれるだけでいいの」も効果的)もよかった。

    ネタバレBOX

    「私は消える」と言って去っていったソジンが、10年後に大人になって表れた。正直、それは救われた。

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    2023/07/04 00:52

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