ホテル・ミラクルThe Final 公演情報 feblaboプロデュース「ホテル・ミラクルThe Final」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い!〈R15指定〉 千穐楽観劇
    新宿シアター・ミラクルの(ラブ)ホテル・シリーズ、この劇場の最後を飾るのに相応しい公演。
    シリーズ過去作と新作の5本立…<面白がってもらえる、観せてナンボ>、つまりサービスに徹した作品を厳選している。描写や状況設定がバラエティに富んでおり、観客の興味を逸らせない構成が巧い。ラブホという謂わば禁断の空間、そこに居るのは男・女もしくは女・女という極めて少数(基本は二人芝居)で、彼ら彼女らの個々の性格をしっかり描き、裸になった人間の本性を曝け出させる。

    ホテル・ミラクル…身体を観ず 言葉を交わさなくとも、彼・彼女の裸を思い浮かべという、本来はその甘美な刺激を空想に求めるところ。が、そこは舞台、覗き疼いてしまうという背徳感に酔う。そして物語の肝は、シャレた会話にある。その内容は人物の血肉となり肉体化し、どこにでも居そうな人物像を立ち上げる。普通の人々の秘密めいたコトゆえに 一層覗き観たい欲望=人間の本性、その欲求を上手く発散させる。

    男女はもともと互いに魅かれあう存在。しかし人には建前のような取り繕い、個人的・社会的な様々な制約に心が縛られ、自由な<性>を楽しむことが出来ない。その もどかしい気持を解放する、そんなエネルギーを感じさせる好演。各作家による短編だから引き出しが多いのは当たり前だが、どの引き出しも優れており、それを巧く構成した演出(池田智哉 氏)が見事だ。これがラストだと思うと残念!
    (上演時間2時間45分 途中休憩5分)【STAY ver】

    ネタバレBOX

    入口側に磨ガラスのシャワールーム。舞台美術は、壁際にミニテーブルと椅子2脚。中央にベット、サイドテーブル、ソファーが置かれている。テーブル・ソファ下の照明が室内を妖しく(ブルーに)照らす。
    客席はL字型。ベットを横から、そしてシャワールームで着替える姿を観るには、奥角の席に座る方が観やすいと思い、【REST ver】の時と同じ場所に座る。
    前説「ホンバンの前にThe Final」(池田智哉 氏)は女 女レズビアンがベットで交わす会話…携帯電話電源off、飲食禁止などの諸注意。既に始まっているので、トイレの話はなし。

    ①「THE WORLD IS YONCHAN’s」(河村慎也)
    高校時代から好きだったヨンちゃんと酔った勢いでヤッたチェリ男。二人(下着姿)とも昨晩のことは全然覚えていないが、チェリ男は喜び舞い上がっている。一方 ヨンちゃんは元カレの先輩と経験しており落ち着いている。もしかしたら先輩が薬を仕込み、二人を前後不覚にしたのでは、との疑心暗鬼。チェリ男は絶体 ヨンちゃんを守ると意気込む。まさに純情青春ドラマ。

    ②「噛痕と飛べ」(加糖熱量)
    女性(チーコとユキ)のお笑いコンビ、チーコがラブホでネタを考え書いている。それを見守る男 カナイ、実はチーコから頼まれサボらないか監視している。隠微な雰囲気に思わせぶりな態度、にも関わらず醒めた会話に終始する。女同士のコンビは解消まじか、いつもユキがネタを考えているが、最後にチーコが。ラブホへユキが現れ3人の不毛とも思える会話が…。カナイの思いが滲み出る熱血ドラマ風。

    ③「愛(がない)と平和」(古川貴義)
    W不倫をしている男(平和)と女(愛)がベットの上で交わす甘美で濃密な会話。この世に男女の営み=愛という概念 がなければ、面倒な諍い・・嫉妬や浮気に悶々とした感情が起きない。が、やはり男と女という生理的に分かり合えない不思議な魅力を手放せない。愛が言う、子供ができたの…でも心配しなくてもいいわ 堕すわよ。リアルな会話は夜な夜な何処かで交わされているであろう 大人の会話(下着にバスローブが生々しい)。

    ④「スーパーアニマル」(ハセガワ アユム)
    欲望(制服フェチ)に溺れた妻帯者の中年男 菅原、彼が夢中になっているのが聖花という若い女性。彼女とは援助交際、好きが高じて彼女の写真をエロ雑誌「スーパーアニマル図鑑」に投稿している。彼女は援助交際の他にコンビニでバイトをしており、店に内緒でビニールを破りエロ雑誌を見ていた。菅原の熱き思いを知れば知るほど切なさが、そして 聖花は そろそろ別れようとするが…(制服への生着替えがエロい)。

    ⑤「最後の奇蹟(最終形)」(フジタ タイセイ)
    男と女の 「(眩しく光る)アイツが落ちてきたらいいのに」という投げやりな会話…初めて会ったのに、以前 何処かで逢ったかも知れない。SF地球最後の日のような…明日は来ないという走馬燈のように駆け巡る回想が切ない。周囲に馴染めずブルーハーツばかり聴いていた、その魘されたかのような台詞が迷える青春イメージ。この世(地)は一度清算して…は新宿シアターミラクルの再生を連想させる(終始 地響きのような不穏音が聞こえる)。

    多くの良作を上演し続けた新宿シアターミラクル、またどこかで…。

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    2023/06/21 11:12

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