『工場』『夜景には写らない』 公演情報 世田谷シルク「『工場』『夜景には写らない』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「夜景には写らない」観劇。
    現実にありそうな出来事、その問題提起のような物語であるが、一方 舞台としてのエンタメ性も観せるという多面的な公演。

    同時上演の「工場」の続編で、主人公たち外国人労働者が来た数年後、彼らを取り巻く環境はどう変わったか、という説明から社会派的な公演といった印象を抱いた。確かにどこかで見聞きするような外国人労働者と日本<*日本とは断定していないが、概ね日本>の諸々の習慣、環境の違いが点描されているが、何となく表面的な感じがする。堀川炎さんが別に「場所が変われば、価値も変わる。私たちが普通と思っている物事も、外側から見れば変かもしれない」と。この手のものは 理屈先行で面白みに欠けるきらいがあるが、身近な出来事を分かり易く綴っている。

    その違いを面白可笑しく描くことで、今ある(労働)慣行・環境を改めて考える切っ掛けになるかも知れない。出来れば、単に外国人労働者(もしかしたら日本の吃音者も含むか)だから区別・差別という側面だけではなく、日本における労働環境、雇用問題にも触れてほしい。ここ数年のコロナ禍による労働形態も従来の出勤だけではなく、リモートワークという新たな就労も定着しつつある。公演は、5年前の「工場」(当日パンフに時代間隔の記述あり)とその続編という設定で 少し時を経ており 必ずしも現状に合っていない、要は足踏み状態だ。労働環境の多様化、そこに外国人労働者がどう絡むのか、広い意味での今後の働き方改革を観せてほしかった。もしかしたら 新たな課題や問題が横たわっているかも知れないのだから。
    (上演時間2時間10分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、或る工場の分析課 事務室。スチール机が横並び 備品・消耗品が置かれている。その空間を囲むように上手 下手に階段があり、奥の二階部へ続き左右に行き来できる。勿論工場の外であり橋の上をイメージさせる。座・高円寺1の高さを利用し、3階部を設え、いくつかの枠組みを作ることによって 外国人労働者の住居(アパート)の部屋(窓)に見立てる。下手に丸ハイテーブル、そこは別空間のスナック。

    冒頭はスナック歌手の歌から始まる。移民(工場の一番初めの外国人労働者)が後輩を迎えに行き、工場へ案内してくる。何かの分析を行っている課であり、外国人籍は専門技術者、エリート社員、そしてハーフの事務員、一方 日本人は、リーダー的存在〈室長〉の丸山(平社員)、廣川(新人社員)といった、キャリアの逆転 もしくは微妙な立ち位置の人間関係にある。そんな職場に言葉(日本語)が喋れない外国人労働者がやってくるが、実は 彼 早く母国へ帰り、もっと労働条件の良い国へ再就職したいと思っている。だから 日本語も含め語学は堪能、仕事も優秀らしいが本性を隠している。日本における就労そのものに魅力(低賃金等)が無くなってきている。

    移民は来日して5年近く経ち、もうすぐ帰国しなければならない。外国人(技術)労働者の在留期限が迫っている。彼が、外国人労働者と日本人労働者の間を取り持っている。日本らしいといえば、出勤時間の厳守、祈りの時間が長くなり就労時間にずれ込むことを注意、ごみ(矢じり 動物虐待)の分別なしに憤る といった あるある問題を織り込む。近々、社長が交代し外国人労働者への対応が変化しそうだとの噂が流れる。また社内では社員の協調性という名目で運動会や餅つきを企画している。外国人には馴染みのない運動会、競技=戦争をイメージするようで理解されない。何よりも終業後に練習するなど以ての外。あくまでNO残業・個人重視の外国人と なあなあ の日本人気質の違い、典型的な描き方であるが面白い。

    大きな障壁になるであろう言葉の問題、しかし後輩外国人労働者は語学が堪能ということから、「場所」」という文化(若しくは意思疎通)の違いは重要視されていない。その意味で表面的な描き方になっている。
    演劇としては、せっかくの運動会(応援合戦)という設定ー外国人VS日本人による綱引きによる決着、その観せる妙。場面転換時の歌手の歌、新社長の方針転換による大団円。その結果、工場内を歩く外国人、何故か直線的な動きをしており無駄がない というか几帳面になり味気なくなった。その滑稽な姿・・日本色に染まってしまったか?
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/06/18 22:34

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