めぐるめく 公演情報 KAKUTA「めぐるめく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    出でて散り重なる時間
    姉妹を中心に、
    登場人物たちの
    ナチュラルなバラツキとまとまりの落差から生まれる
    質感に浸潤されました。




    ネタバレBOX

    冒頭、11年間昏睡状態だった
    4人姉妹の長女の意識が戻ったことを知らない
    3人の妹や妹と暮らす長女の長男の
    それぞれの日々の中での荒み方が、
    ちょいとエッジを効かせて展開し、
    観る側が物語の世界にのせられていきます。

    シーンのしなやかな切り替えや
    舞台に満ちるアンサンブルを含めた人の動きが
    舞台の時間に質感を作り出していく。
    シーンたちに含まれるウィットが
    登場人物たちの生活スタイルや生活感を端的に編み上げ
    それぞれからからこぼれ出る
    下世話な日々の感覚を観る側に擦り込んでいく。

    その下地があるから、3人の妹やその周りの人たちに
    長女が姿を見せるシーンがとてもヴィヴィッド。
    さらには、亡くなった長女の旦那の墓参りにいく、
    ちょっとロードムービーを想起させるような旅のシーンたちに
    心を奪われる。
    塗りつぶされない距離の詰まり方で束ねられていくものがあって、
    それが、家族という一つの箱に納められきってしまわない・・・。
    どこかはみだした感覚がコミカルでナチュラル。
    それゆえにシーンの間にすっと差し込まれた
    目を見張るようなひと時のスケッチに心奪われるのです。
    車窓に現れた海を眺める表情がひとつに束ねられて・・・。
    バラツキとまとまりの質感の間から零れ落ちる
    奇跡のような重なりの刹那に息を呑む。

    それらの空気が観る側をしっかりと浸潤しているから、
    長女が再び眠りつづける状態になって
    親戚たちがばらばらになったように見えても
    個々の生活が流れふたたびまとまっていく感覚がわかる。

    三女に子供ができたり、小説家の次女の担当がかわったり、
    長女の看病の粛々としたルーティンが生まれたり。
    長女の息子と家出女性のこと。
    介護士のエピソード。
    四女が長女の息子との同居をやめること・・・。
    姉妹たちやその家族、周辺の示唆に富んだ物語たちから
    再び個々に流れる留まらないそれぞれの時間が浮かび上がり、
    それぞれの時間が丸められずに描かれるからこそ
    出でて散り
    あたかもめぐりくるがごとく重なる時間の質感が
    観る側を満たしていくのです。

    タイトルの「めぐるめく」は造語なのでしょうけれど
    その造語でしか表現しえないような感覚が
    観る側に確かで奥行きをもったフォーカスと
    微細な解像度で伝わってくる。

    終盤に描かれる、
    長女の息子に対する普段着の深い愛情・・・。
    たとえば墓前で自然にマフラーを息子にかけたり
    電車の中でふっと言葉に漏れだすような・・・。
    そんな想いが
    それぞれの時間を束ねる
    ルーズな仕付け糸のようにも思えて。

    積み重ねるシーンから醸し出される空気で
    時間の流れを俯瞰させる場所にまで観客を導き
    観る側を共振させ
    肌触りを観客に伝えきった
    桑原作劇の秀逸に感嘆したことでした。

    3

    2010/05/29 09:41

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  • KAE様

    コメントありがとうございます。
    感想をお読みいただいたとのこと、重ねてお礼申し上げます。

    「めぐるめく」、ほんとうによい舞台だったと思います。
    こういうお芝居をみると
    ますます劇場に足が向いてしまいます。

    今後ともよろしくお願いいたします。

    saeko様

    コメントありがとうございます。

    良いものを拝見させていただき、ありがとうございました。

    2010/05/30 09:23

    ご来場&コメントありがとうございました!

    2010/05/29 23:20

    りいちろさんのKAKUTA 観てきたコメント、楽しみにしていました。
    いつも、とても詩的に素敵なコメントを書いて下さるので、りいちろさんは、この御感想、どんな風に表現なさるだろうかと、観終わってすぐに、興味津々で、今か今かと待ち望んでいたんです。
    本当に、何て素敵な、舞台の空気感まで伝わるような、美しい表現でしょう!
    感嘆しました。KAKUTAの作品同様、何だか芸術的!!
    これからも勝手に、隠れ読者を続けさせて頂きますので、よろしくお願い致します。

    2010/05/29 19:03

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