初老の血 公演情報 劇団 枕返し「初老の血」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    昭和時代に流行った任侠映画、その美学(義理 人情)と妖怪を絡めた物語であろうか。今一つ 何を描き伝えようとしているのか分からない。自分の感性が初老を超えて枯渇したか?

    登場人物のキャラクターは濃く楽しめるが、ヤクザの抗争というよりは昔馴染みの諍い。それを何故だか定食屋内には持ち込まない不文律のようなものがある。コメディだから細かいことは気にせず楽しめば良いのだろうが…。
    一方 劇団のコンセプト?妖怪(作品には必ず登場)…今回は「ぬりかべ」で、一般的に知られる形とは異なる。その異形の存在と舞台美術という両面で巧く活用している。一種の被り物で、ずっと舞台上にいるという 体力的に厳しい役柄だ。

    「ぬりかべ」の役割は 「何か」若しくは「誰か」を守りたい、という<思い>であり、時を遡行し戦時中へ。個人的にはこの場面をもう少し掘り下げ、任侠の世界と絡ませて観(魅)せてほしいところ。先のヤクザと ぬりかべの話がラストに少し絡む程度で…。表層的にドタバタしただけのコメディ、それなりの繋がりで もう少し心に響くものがほしい。
    (上演時間1時間30分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手(阿過組)と下手(死路組)は非対称、しかしどちらもビールケース(サッポロVSアサヒ)で居酒屋の雰囲気を漂わす。中央に壁(ぬりかべ)があり仕切っている。中央(客席寄り)は、別のビールケース(キリン)が置かれ 立場の違いを表す。下手に別空間を表すカウンター席。

    長年諍いの絶えない2つのヤクザ組織ー阿過組と死路組だが、それぞれ世代交代の時期を迎えている。阿過組では二代目が引退をし、三代目に孫娘を考えている。一方 死路組は末娘が四代目の跡目を継いだばかり。暴対法の影響で組員も減少し、といった昨今の事情が描かれる。諍いの原因は シノギ にあるらしい。第三者(牽制 中立?)的な立場として地元警察を絡ませる。冒頭 先輩刑事が新人刑事に、地元ヤクザの実態を教えるという構図でこの店に来る。それぞれの組の事情を親分と幹部組員の会話で紡いでいく。

    物語が動くのは、阿過組の組員が死路組の組員に向かって発砲したこと。双方が負傷しどう修羅場を収めるか。阿過組の跡目を渋っていた孫娘が、「誰一人欠けてもいけない 」といった啖呵を切る。二代目も ヤクザは「誰にも相手にされなくなった者の駆け込み寺のような世界」と言う。一見 昭和の義理人情の世界が観えるが、深みがない。ちなみに二代目が引退したいのは、刑事に惚れという自分都合。そのため孫娘を呼び返す我儘ぶりである。孫娘(35歳)は、若い時(25歳)に流産し子が産めないよう。嫁ぎ先では辛い思いをしていた。

    この孫娘の「命」の話…誰一人欠けてもいけない、発砲騒ぎを起こした若い組員を赤ん坊の時から面倒を見ている、そして妖怪「ぬりかべ」の守(護)りたい者(モノ)のため、戦時中へ遡行したい思い。それらの場面を縦横無尽に紡ぎ、もう少し広がりと深みのある物語にしてほしい。
    表層的なドタバタコメディ(先輩刑事を投げる等)に止めておくには惜しい。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/06/11 07:15

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