本人たち 公演情報 小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク「本人たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度

    「演劇」や「上演」、およびそれらに対する観客の一般認識を覆す(あるいは少なくとも問題化する)であろうことが期待された本作だが、残念ながら独りよがりの印象が強い作品だったと言わざるを得ない。

    ネタバレBOX

    本作は二部構成だったが、そのいずれもが筆者には響かなかった。というのも、ほとんど行っていることの違いがわからなかったからである。第一部「共有するビヘイビア」では俳優・古賀友樹が客席に向かって一人語りを行い、第二部「また会いましょう」では渚まな美と西井裕美がそれぞれ話しているのだが、それが会話に聞こえたり聞こえなかったりする。発話のアドレスが客席かそうでないかという違いはあるものの、どちらも観客がいなくてもあまり変わりがなさそうであるという点において演劇的な面白みを欠いていた。
    いずれも、演劇的発話の特異性を炙り出せそうな可能性は感じられた。例えば、会話になりそうでならない渚と西井のやりとりは観客の想像力を刺激し、両者が街中で出会っていたりそうでなかったりする情景を想像の中で遊ぶことはできるかもしれない。しかし、そこまでの想像意欲が掻き立てられなかった。

    演劇や俳優の存在、舞台上での発話行為、現代におけるリアリズムなどを遊戯している(と類推される)という点において本企画は挑戦的であり特異だと言える。その着想は評価に値するものの、その先の議論へ展開されないことにフラストレーションを感じる。演劇に対してメタシアトリカルあるいはパラフィクション的な試みは時折刺激的だが、その試みの本質すなわち問題の核が見えないことには始まらない。残念ながら筆者にはそれが伝わってこなかった。

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    2023/06/07 06:30

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