実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/05/24 (水)
中目黒キンケロ・シアターにて東のボルゾイ『IBUKI』を観劇。
初見のカンパニーで、ミュージカル作品であるということ以外は特に何の予備知識も入れずに拝見させていただきましたが、まず頭に浮かんだのは「斬新」というキーワードでした。
そもそも東のボルゾイというカンパニー名からして、個性的でインパクトがあるのですが’(命名の由来、経緯も気になるところ)、良くも悪くも現代社会においてよく耳にする"多様性"というなかなか攻め込んだ&メッセージ性のあるテーマに加え、その描き方、ステージの見せ方、ミュージカルナンバーの曲調、雰囲気など、様々な面において「斬新さ」を感じる作品だと思いました。これまでに観てきたミュージカル作品とは一線を画すような独特な世界観、表現手法が含まれていたような気がします。そして、その感覚は最初から最後まで続きました。
社会的なテーマを扱っていることもあり、リアルさを感じる面もありつつも、漫画の世界ともいえるようなユーモア溢れるぶっ飛んだ描き方(Dr.先生、セカン田オピ吾郎先生が登場するシーン然り、オノノハハ、アネゴ、イモコらが登場するシーン然り...)もあったりと、全く先の読めない独特の"ワールド"に迷い込んだような不思議な感覚に陥りました。
公演パンフレットには、脚本家の方が自ら経験した海外暮らしにおける実体験(差別扱い)の話や、脚本構想、制作の歩みなどの裏側の様子が掲載されており、一つ一つを組み立てながら考えていくと、なるほどなぁと納得出来る部分が出てきたり、考えさせられるような部分も出てきたりして、なかなか奥が深いと感じました。同じ人間であっても、考え方や価値観は様々。本来その一つ一つに存在意義があると思いますが、実際は些細なことだったり、漠然とした固定概念、偏見などが差別や揉め事に繋がっているのが現実かと思います。クライマックスのシーンで出てくる「差別するなら知り尽くしてからにして」といった台詞は重みがあると感じました。
役どころもあると思いますが、オノ役の東間一貴さん、ノコギリ役の仲井真徹さん、キリ役の飯塚萌木さんの好演はインパクトがありましたし、他キャストさんのエネルギッシュなお芝居も印象的でした。一捻りも二捻りもある挑戦的な作品で、観終わった後には何となく日常に「IBUKI」が吹き込まれたような感覚に浸れました。