実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/05/25 (木) 14:00
座席1階
どこまでも前向き。青年劇場らしい舞台だった。農業を考え抜いた作家山下惣一の作品が原作で、今風にアレンジしてある。
扱っているのは農業だが、テーマは太陽光発電と農のコラボであるスマート農業や、富裕層向けの付加価値を付けて輸出する農業の未来、飼料の高騰で危機にひんする酪農、これらをめぐる世代間対立。老いらくの恋というタイトルは、主人公のおじいさんが若い女性と恋仲になるのではなかった(当たり前か)。このほかにも、昭和の男は連れ合いに「ありがとう」を言えないとか、ラストシーンに向かって走る世代間協力とか。脚本の高橋さんは盛りだくさんの要素を盛り込んでいる。これも青年劇場らしい舞台と言えるかもしれない。
青年劇場の看板俳優である葛西一雄、藤木久美子、吉村直が舞台を引っ張る。どちらかというと高齢者が頑張っている舞台だ。客席も高齢者が大半を占める。だから、金色夜叉のメロディーが流れるとあちこちで笑いが起きた。葛西と吉村の金色夜叉の村芝居にも、大きな拍手が起きていた。数少ない平成時代以降生まれのお客さんには、どういうことなのか分からなかったかもしれない。
だが、舞台が扱っているのは現代であり、ウクライナ戦争による穀物価格の高騰、飼料価格の高騰や新型コロナ、農地での太陽光発電なども舞台の要素である。冒頭、食料自給率の問答から始まるが、高齢化が進む日本の農業をどうしたらよいのか、考えさせられる舞台でもある。