実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/23 (火) 14:00
座席1階
道学先生が中島淳彦の戯曲でないものを上演するとのことで、なぜこの戯曲を選んだのかが、開幕前の興味。文化庁演劇大賞を取ったから? いや、賞は関係ない。この本は絶対おもしろい。それを秀逸な出演者たちが支えている。先入観なしで見たほうがいいと思われる。感動的におもしろい。
食糧不足の地球を救うために地球へと航行を続けている宇宙船が舞台。あと数十日で地球へ到達するという時に地球上の母国で異変が起きる。一方の宇宙船でも想定外の緊急事態が発生。この宇宙船は地球を救うことができるのか。
宇宙船のメンバーは選りすぐりのエリートたちという設定だ。女性の方がやや多いが男女比はほぼ半々。中島作品でもそうなのだが、登場人物は普通の人のようで結構個性的だ。そうした人たちの微妙な人間関係を描くのが中島作品だから、青山勝がなぜこの戯曲を選んだかがこれを見れば分かるような気がする。
というわけで、中島作品を堪能するように、今作も楽しめる。しかも長期間の閉鎖空間のコミュニティーである。恋愛はご法度なのに、水面下で結構風紀が乱れているのはいかにもそうなんだろうなという感じがするし、潔癖性の女医さんが恋愛未経験で、キスの経験もなく死にたくないと騒ぎ出すなど、舞台は次から次へと波乱が起きて飽きることはない。極限状態に置かれたエリートたちの個性的な振る舞いがこの舞台の最大の見どころで、笑えるし少し泣けたりもする。
個人的には、やはり演劇ユニットOn7(オンナナ)を率いる青年座の尾身美詞が出色の出来だと感じた。四人きょうだいの長女役。きょうだいの中でも、宇宙船のメンバーの中でも確固たる存在感があり、思わず引き込まれる。
シンプルな演出だけに、役者たちの個性を十分に引き出している。秀作だと思う。残すは千秋楽。見ないと損するかも。