アクターズハイ 公演情報 LUCKUP「アクターズハイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    燃える役者魂を観るような物語。サスペンス ミステリー仕立で描いており、何となく分かったような気がした筋立てだが、実は予想外の展開で観(魅)せてくれる。人生は舞台、人は(大根)役者、というシェイクスピアの有名な台詞を繰り返し、「役者(演じ)」とは を問う。小難しい演劇論を聞くより、役者として 演じることへの凄まじい思い 秘めた執念が感じられる内容だ。

    タイトル「アクターズハイ」とは実に上手いネーミング、主(人公)役と脇役の関係をシステムの相互作用に見立て、特定の目的の役割を現す存在として登場させる。ただし本来は 具体的な実体ではなく、或る抽象的な存在になるはずが、公演では重要な役割を担う脇役として登場させている。同時に満足できる演技によって「ランナーズハイ」のように爽快感と高揚感に浸れる と。オッとこれ以上書き込むと、物語の内容に踏み込んでしまいそうだ。

    清水邦夫の「楽屋」執筆は、ある劇場で楽屋の壁にアイロンの焦げ跡を見て、そこに居た役者たちの想念を感じたからと言われている。アプローチは違うが、本公演も一人の俳優人生を熱く語り、冷徹に見詰める愛憎劇を通して舞台(公演)に立つ俳優の演技(目的)を知ることが出来る かも、ぜひ劇場で…。
    (上演時間1時間25分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は四角い枠、その中央正面に可動式の衝立2つ。その後ろにはソファが置かれ、シーンに応じて移動させる。全体的は ほぼ対称をなしているが少し歪んだ形をしている。それが役者として成功を夢見る男トニーの心象風景のよう。演出ー照明は回転させ揺らめかせることで 心の迷いを感じさせる上手さ。

    トニーは役者を続けるか否か迷い苦悩している。そんな時、トニー親衛隊というファンサイトをみて、元気 勇気づけられる。幾度の苦難を乗り越えてスターの座を得るが…。人気を博すと人は増長し傲慢になる、といった典型的な人間像も描く。トニー親衛隊は、トニーに何らかで助けられた人々、同時に手痛い目に合わせられた人々。人の行為には表と裏の面があり、その複雑な心の内を投影したかのような描き。応援して絶頂期を見せ落とす悪意ある行為、まさに天国から地獄へ。何となく褒めと貶め、人間の本性が透けて見える。

    役者になりたい男2人…トニー(新井將サン)とK(遠藤巧麿サン)、切磋琢磨し演技力の上達を競い合うが、トニーには どうしても敵わないと…。実は、役者になることを諦めたKがトニー親衛隊を率いて応援している。トニーが見つめているのは鏡の中、そう自分自身の姿に苦悩している。説明にある「光と影、過去と未来、嫉妬・恨み・スキャンダル…」は、全て自分の心に抱いた思いと行いを示す。
    演劇という虚構、それを「役者」という存在に見立て、役柄と本人という虚実の正体を暴くように描く。

    冒頭、可動式の衝立が左右に開き、一人の役者<俳優>が登場し物語が始まる。その光景こそ<幕が開く>を表している。落語家が羽織を脱ぎ 噺へ…その一人噺には大勢の人物が現れては消える。それを演劇として観(魅)せる奇知に驚かされる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/05/13 17:26

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