葛飾ナンバー 公演情報 A.R.P「葛飾ナンバー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    表層的にはコメディとして観せているが、描かれている内容は鋭い批判または問題劇になっている。説明にある通り、コンクリート部屋の中に閉じ込められた人々を通して、今の世の息苦しさ、生き難さを浮き彫りにしていく。まさに酸素濃度計のアラームならぬ閉塞系の警鐘が観てとれる。同時に タイトル「葛飾ナンバー」に込めた問題意識が現代日本の悪しき風潮のようなものを表す。

    3部屋に5人ずつ監禁され、同時進行するサスペンス劇。登場人物は多いと思っていたが、その人間関係をもって 或る共通性と相違性を鮮明にしていく巧さ。勿論、一人ひとりのキャラクターの面白さを観せるためでもあるが、人にはそれぞれの生き方や考え方がある。皆 同じ方向に向き進むのではなく、その違いが大切なのだと…。
    (上演時間1時間35分)

    ネタバレBOX

    舞台美術…冒頭はレンガに葉が繁っている壁、暗転後 コンクリート部屋という怪しげな状況にする。部屋隅に酸素濃度計が置かれ、その色光が妖しく 時間的な制約を表す。壁には部屋番号があり、1~3号室の状況が交差しながら展開していく。各部屋には5人ずつ、計15人が監禁されている。なぜ監禁されたのか、その理由・原因が分からないといったサスペンス劇。

    1人の男が持っていた小道具を使い、何とか監禁された人々が1号室に集まった時 明らかになる衝撃の事実。全員 葛飾区民という共通性、一方 喧嘩や諍いをしていた人々の組み合わせ。究極の状況下におかれたことによって仲直り出来るか否か、その実験のために集められた と。この実験は或る目的遂行を見極めるため。謎の人物によって次々に説明される驚愕の内容とは…。

    荒唐無稽とは思えないコト、今の状況を冷静に分析し問題を鋭く指摘する。一方、監禁された人の中には面倒なコトは考えたくない、といった自分の意見がない 若しくは 日和見者もいる。全員が同じ方向に歩みを進める怖さ、それを意見や考え方の違う人々の喧嘩や諍いとして諭すような描き。同時に「葛飾ナンバー」=「マイナンバー」を意味し、都区部における低所得者層、それに比例した学力云々といった差別的な台詞は根拠なき風評表現の怖さをも表す。面白可笑しく描いているが、現状を鋭く批判した社会派(陰謀)コメディといったところ。

    音響照明といった舞台技術は印象にないが、キャストは夫々の性格や職業、情況を実に上手く表現している。同時に如何に脱出するか、その緊張・緊迫感を上手く現わしていた。その演技力が物語の面白さを支えている。
    ラストは、白昼夢か幻想といった雰囲気で和ませるが、描きたい<テーマ>は暈けさせず、巧に舞台化しており 見事。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/04/29 17:22

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