播磨谷ムーンショット 公演情報 ホチキス「播磨谷ムーンショット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    過去一度(7年位前)観たホチキスの印象は、薄れているものの、とにかく体力全開、ロックな印象。歌、音楽、アトラクションがメインのような舞台であったが、当時自分の関心であったドラマの構造(俳優への関心薄し)が些か脆弱で、残念感を覚えた記憶である。その後、舞台の印象と共に刻まれた主役・小玉氏を外部で目にするにつき、拒否感は薄れ、先入観を払拭して久々の観劇と相成った。
    荒唐無稽なストーリー(この劇団の特色と言ってよさそう)で、観客に「乗りツッコミ」の忍耐を強いるだろうドラマを、程良い笑いや小ネタ、テンポで超えさせて、最後にはちょっとしたクライマックスをもたらす。アトラクション主体、という点は以前のに通じてもいるが、今作は「ありそうでまず無い」ドラマが大きな瑕疵なく着地していた故、笑いを伴う役者のパフォーマンスもドラマの流れに即した順当な(というのも妙だが)「演技」として屈託なく成立していた。

    ネタバレBOX

    笑えた分だけ気持ち良く帰路についたが、コールでの挨拶は長かった。

    話の方は、探偵ないし殺し屋という裏世界の組織が舞台。冒頭におどろ恐ろし気な音楽と共に「悪魔」的いでたちの(それが似合う)小玉氏が、舞台奥上段で威嚇のポーズをとり、イメージ図を示す。暗転後、黒ずくめの殺し屋の先輩と後輩、彼らに指令をもたらす者三名が組織のルーティンを小気味よく演じる場面。以上でこの芝居のB級感満載な舞台設定が完了。「とある指令」で二枚目の先輩隊員が訪れたのが、播磨谷何とかというサービスエリア。一挙に日常社会な空気となる。
    小玉氏が今度は(商才逞しいという設定だが)庶民臭芬々たるおばさんに扮して登場。SAに出店する3店舗の他の二つの店長共々、このおばさんに付いて豆腐屋(このSAで人気のサクサク油揚げを作って売る)の修行をするという仮面生活が始まる。これがちょうど、貴族と庶民の対比のような構図になる。即ち二枚目の優秀な「殺し屋」稼業に勤しむ男は、一般社会とは離れた世界に棲んでいたがため、知識の上でも感覚的にも「庶民」に物を教わる立場となる。そしてその免疫が無かった男は「別の世界」を知って行く・・変化の契機となる。
    当初の使命は生きており、男のどこまでが演技でどこまでが本当かは伏せられ、実はそのどちらかは重要なのだが、観客はこのSA界隈での出来事に関心が移り、一旦保留された「使命」が換骨奪胎されていた事を後で知るが、支障なく橋を渡るのである。
    その後は種明かしとなり、組織を作った張本人の計画自殺が表沙汰になりそれを止められるなど少々無理気な展開もあるが、SA界隈に生まれた「群像」がキャラ・風貌の立った俳優面々による絵となり、爽快に幕を下ろす(よくある大団円)。
    生きるか死ぬかの価値観(いわば戦争)から、日々を積み重ねる暮らしの価値観へ・・そんなメッセージを汲み取る程の真剣味を感じたかと言えば中々厳しいものがある(というのも「戦争」は人々の感情の延長にではなく世を動かす力によって人為的に仕組まれる側面が大であるので)のであるが、あるいは感覚的なレベルではこのテーマ性を感じ取っていなくもない、かも知れない。

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    2023/04/13 01:38

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