ナイゲン(にーらぼ版) 公演情報 24/7lavo「ナイゲン(にーらぼ版)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い!お薦め。
    何度か観ているが、改めて演出やキャストの違いによって劇の印象が異なって観える ことが分かる。同時に シアターミラクルが閉館と分かっているから、ラストシーンは なおさら印象的に感じた。

    自分は天邪鬼か…出来過ぎた?がゆえに不満が残るという奇妙な感じ。説明にある「会議を描いたコメディでありながら、民主主義や自由の意義を問う青春群像劇」に間違いはないが、会議を通して高校生の成長を描いた物語でもあろう。その成長譚の代表格が議長であり文化副である。例えば、議長はその職を仕方なく引き受け、会議を通じて成長していくといった先入観を持っていたが…。確かに表面的には優柔不断で 他人の言動で右往左往するが、冒頭から大声で会議を仕切ろうと やる気満々の態度(良い意味での演技力)である。そこには成長譚が観られない。

    夏休み前の或る1日、午後から夕刻にかけて行われた会議<通称:ナイゲン>、その激論を終え、3年生・花鳥風月の「こんなナイゲンがやりたかった!」が物語の肝。照明…会議中は明るい陽光、しかし夕刻には黄昏に変化する、その哀愁がシアターミラクルの閉館に重なる。
    (上演時間2時間15分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    セットは会議で見かけるロ字型。正面にグリーンボード、その上部に時計がある。上演時間とナイゲン討議時間(下校2時間前の時刻 16:15~18:30)に重ね合わせて臨場感を持たせる。客席はL字に設え、観客には会議の立会人のような緊迫感を持たせる。
    内容限定会議(通称:ナイゲン)は、県立国府台高校 文化祭”鴻陵祭”における各参加団体の発表内容を審議する場である(文化祭規約)。規約が”自主自律”の精神に則っている。この規約が掲載された「内容限定会議資料」(劇中使用と同様)が観客にも配付される。すでに参加団体の催し内容も確認したところに、学校側から「節電エコプログラム」の催しを押し付けられて…。

    発表内容に関する指摘、恋愛(痴情的)感情、上級学年優先や 何となくなど、意味不明の理由まで飛び出し議論は漂流し続ける。始めの理論武装された議論から感情優先のドタバタコメディへ…。いつの間にか文化祭全体会議からクラス代表の顔になっている。下校時刻が刻々と迫ってくる。そんな中、演劇の上演許可を得ていないクラス(3年1組<花鳥風月>)があった。ナイゲンの議論は、如何にこのクラスが主体的にエコプログラムを受け入れるか、という話へすり替わっていく。自主自律の精神に沿わせようとするもの。

    さて、花鳥風月(音峯大樹サン)によれば、上演許可に係る資料はクラスの女生徒が提出していた、にも関わらず許可が得られなかった?提出忘れまたは錯誤?という疑問が残る。学校側は既に「節電エコプログラム」をやらせるつもりで、ナイゲンの最終日ギリギリで提案してきたのでは?という様々な憶測を持たせる面白さ。

    教室から出られないという密室状態、しかも会議時間が限られているという空間と時間の制約に緊張が生まれる。テンポ良く、また疾走するような会話劇は、立会人的な観客も固唾を呑んで見守っている感じ。会話劇だけに登場人物のキャラクターや立場などが観(魅)せられるか。個性豊かな登場人物を演じるキャストが変われば劇雰囲気も変わるだろう。内容の面白さは勿論、キャストによって違った印象になるから、何度観ても飽きることはない。

    会議は民主主義、自由とは を問うているが、同時に高校生の成長する姿も描く。例えば議長(平井泰成サン)は優柔不断な性格のようだが、学生側の「自主自律<ナイゲン>」と学校側の「節電エコプログラム」の間でギリギリの調整を試みている(ここから成長していく過程が観られるのでは)。文化副(井澤佳奈サン)は夏休みを謳歌すると公言していたが、会議後は文化祭(実行委員会)の手伝いを監査(寺園七海サン)に申し出るなど、変化が見られる。

    各クラスの発表内容の審議結果を多数決(民主主義的な)で決める。討議では自分の考えを訴えつつも相手の言い分も聞くという態度が大切。物事を決める熟議のプロセスを重視している。意見の一致も大切だが、一人ひとりが違った見方で世界を見ることで世界はまともな形で存在するかも。芝居ではこの役割を3年3組_どさまわり(浅見臣樹サン) に担わせている。にも関らず、全体討議終了後の採決は全会一致の承認が必要であると…そうであれば議論の過程の多数決は何の意味があったのだろうか、という疑問が生じるところ。

    会議後、花鳥風月が将来に向けて、皆がやりたがる「エコプログラム」を創作する。同時に「こんなナイゲンがやりたかった」は、有名無実になりつつある自主自律<ナイゲン>の精神が感じられたからではないだろうか。真に問題が解決した訳ではなく、会議内容の真価はこれから問われるのだと暗示している。実に深い余韻を残しており見事!

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    2023/04/10 06:29

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