「ユー・アー・マイン」 公演情報 クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)「「ユー・アー・マイン」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    クロカミならではの笑いの醍醐味
    1年ぶりの本公演。前回の「ボン・ボヤージュ」がサスペンスタッチのSF人情喜劇といった趣の作品だったせいか、勘違い、辻褄あわせ、取り違えなどにより混乱が増幅していく、野坂実お得意の手法によるコメディーは本当に久々ということになろうかと思う。
    開演前にパンフレットの複雑な人物相関図にゆっくり目を通し、頭の中に叩き込むことから観劇が始まった。こんなに早く劇場受付をすませたのも自分には珍しいこと。観るほうも力が入っていた(笑)。
    客演陣には、このところ続いた番外公演の出演メンバーが揃い、劇団員たちとの息もピッタリで、野坂演出にも慣れているせいか、クロカミならではの笑いの醍醐味を味わわせてくれた。ノリと勢いで突っ走る若手劇団の笑いとは一線を画し、大人の観客を満足させてくれる演技力がベースにあってこそのきっちり作りこんだ笑いがクロカミの魅力だと思う。
    そのせいか、番外公演でも、観客の年齢層が高かった。この劇団の芝居のスタイルに惚れ込み、参加を熱望している客演俳優が多い点では、電動夏子安置システムなどとも共通している。作・演出家と役者だけでなく、裏方さんらスタッフたちも含め、互いに尊敬し、信頼し合い、その団結力がすばらしい劇団は、やはりいい芝居を見せてくれるものだというお手本のような劇団である。

    ネタバレBOX

    いつもながら、本格的な舞台美術のセンスがよい。子供が生まれたばかりだというのに、マンション販売で成果を出さないとクビだと上司・辻健一(松岡努)に言われて頭を抱える不動産会社の営業マン・梶佳介(渡辺裕也)。2日前に梶の同僚の美伽(薬師寺尚子)にふられた社交ダンス講師・田端幸太(太田鷹史)と、前の日に彼氏の西園(加藤裕)の浮気現場に遭遇し、振ってしまった加瀬千郷(川本亜貴代)。
    2人とも結婚を前提に、家族に相手を引き合わせることになっていたが、別れたとは言えず、梶の勤務先のツインタワー億ションのモデルルームに相談にやってくる。
    千郷は、梶の妻とも友人だが、梶が酔って醜態をみせた写メを見せ、襲われたと言って妻に送ってもいいのかと脅して、強引に協力させる。
    梶たちはタワーズマンションのA棟とB棟のモデルルームを利用して、お互いを結婚相手だと偽り、それぞれの家族に紹介しようと計画を企てる。
    千郷は起業家の姉・依子(手塚桃子)との夫婦仲がうまくいっていない年下の夫の治(細身慎之介)と不倫関係にある(加瀬家は全員が加瀬姓だが、治は婿養子なのか?)。幸太の母・郁代(山素由湖)は高血圧症(おっとりとして天然っぽい)。姉・要(岡田梨那)はなかなか彼氏ができないと悩んでいる。
    プレイボーイぶっているが実は童貞の不動産会社社員・成美忠(ワダ・タワー)。辻の娘でモデルルームに遊びに来ていた媛花(ハマカワフミエ)は、父の前ではいい子を演じているが、実は蓮っ葉な女。ハマカワの変身ぶりがいまどきのギャルらしくて、笑いを誘う。
    B棟のモデルルーム見学を予約していたのに、苗字が「休(やす)」のため、B棟は「休み」と勘違いされてしまった休司門(久米靖馬)や、何とか千郷とよりを戻そうと追ってきた資産家の息子・西園、媛花らも騒動に巻き込まれていく。媛花は若いのに偽装家族の母親役にされて困惑(笑)。休は、偽装家族のことを「新種の営業のための即興劇」と説明されて信じ込み、観ているうちに自分も演じたくなって、勝手な芝居をして、さらに話が混乱する。久米が勝手に弟を名乗ったため、弟役をやるはずだったワダ・タワーが男なのに母親役を演じるハメになったり、もうメチャクチャである。
    休と西園、要と千郷が友人同士であるなど、都合のよい設定も目についたが、混乱の中でめいめいの役どころがどんどん変わっていく可笑しさは、やはり役者の巧さあってこそ楽しめる。
    幸太と美伽はよりを戻し、依子と治の仲は修復されるが、千郷は西園への愛情に疑問を感じ、シングルマザーの道を決断する。
    最後に、梶の妻に既に写メールが送られていたり、成美と媛花の抱擁を健一が目撃するオチが付く。
    どんな球もしっかり受け止めて確実に返球する名捕手・渡辺、直球型で一途に演じるからこそ可笑しみが出る加藤、守備範囲の広いワダ・タワー、役の解釈が確実でリアリティーあふれる川本と、劇団員の安定感はさすがだ。
    客演では千郷の義兄・細身、幸太の太田、幸太の母の山素、依子の手塚が好演。
    「別れた」と正直に言えばいいのに、どうせ、あとでわかることなんだからと言ってしまえばそれまでだし、家族の食事会をなぜモデルルームでやるのかとも思うが、だいたいこういうコメディーは実際にはなかなか起こりえないことを大真面目にやって見せるから面白いので、そのへんは、ハチャメチャな展開を楽しむしかない。
    ただ、終盤に西園が休に頼んで父親役まで演じさせたりする場面は混乱しすぎの感がある。もう少し、話をすっきりさせたほうがよいと思った。

    ほかに気になった点は次のとおり。
    脚本上、幸太の姉・要の存在が中途半端に感じた。
    台詞で梶が「てんちてんめいに誓って」と言っているが、「天地神明に誓って」が正しい。
    もうひとつ「獅子が千尋に突き落とす」は「獅子がわが子を千尋の谷底に突き落とす」が正しい。「千尋」は固有名詞じゃないです。故事は正しく引用してください。
    ワダ・タワーが、週末の見学会で屋台も出てお祭り気分とはいえ、不動産会社は週末のモデルルーム案内も正規勤務なのだから、お客の来る場所で私服のような派手なチェックのズボンをはいているのは違和感があった。
























































































    0

    2010/05/14 22:59

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大