『エレベーター音楽』公演終了 ご来場ありがとうございました!! 公演情報 津田記念日「『エレベーター音楽』公演終了 ご来場ありがとうございました!!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    だから、あなたは、そこにいて。
    最初は頭のてっぺんにお花が一輪咲いているようなひとたちの現実味がなく、進展しない会話や難解な振る舞いに目が点になりつつ俯瞰しながら観劇していたけど、それがだんだんゴールを知らないロールプレイングゲームのなかで苦し紛れにロードとセーヴを繰り返しているような、真っ暗でそこには誰もいなくて、あぁきっとこれが世界の果てという場所なのかもしれないな。なんて、とにかく途方もないところへ来てしまったものだなぁというどうしようもない感覚に陥って、逃げ出したくなったりもした。
    夜の音とか、風の音とか、哀しみの音とか、そういう音を聞いて、
    終わる世界でこれからも生きていくことに、勇気もらいました。

    ネタバレBOX

    迷宮の入口のような不自然なアーチ状の木枠。その後ろには、びっくりするほど平坦な黄土色の雑居ビル…。ここ、がどこなのかまるでわからない。なんならビルごと宙に浮いていてもいささか不思議ではない。隕石が衝突しあうような、轟音が鳴り響き、ものがたりははじまる。

    星がキレイな夜、ハミングバードのようにビルから飛び降りた女と女をずっとみていた壁との交流、女の意識下で繰り広げられる王女とサボテン&守衛らの寓話的な会話が夜が明けるまで交互に展開するのが主な流れ。

    劇中に何度も「終わる」「世界」ということばが繰り返されるけれども、それは女が存在しない世界は、女がいない人生は、女にとって全く意味のないことであるから世界は終わる、ということ…。

    あっけなく地上に落下した血まみれでぐっちゃぐちゃの女に壁は話しかける。
    女は最初は訝しむがだんだん心を開きはじめ、野良猫を追いかけたことや、おいしいお好み焼きの食べ方など、他愛のない会話を通じて失いかけていたアイデンティティを取り戻しはじめる。と同時に女は、生きる意味を見失ったことを思い出す。いっそのこと戦争に行ってしまえばよかったのかな、とも。
    壁は、女は本気で死のうとおもったようには見えないし、カミサマや運命も信じているのだし、世界を(=女)終わり(=死なせない)にしたくないとおもう。

    一方、守衛のひとりは身体がしびれると訴えていた。
    女王さまは「それは世界に対して敏感に生きていることなのよ。」というものの、世界の終わりは近づいていて、もう生きることはできないと知っていた。だから女王さまはオモシロイ話をするよう、守衛に言いつける。
    守衛のひとりは女装したり、もうひとりの守衛は唐突にレズビアンであることを告白したりするも空回り。王女さまはちっとも笑ってくれない。今度は、サボテンの番。サボテンは自虐的に誰かに触れると、きまって棘で傷つけてしまうことにジレンマを抱えていることを告白するがもちろんそれは聞き流されてしまう…。

    怒ったサボテンはある告白をする。それは、女王をはじめとしたこの4人は、よんぶんのいちになっていてもう生きられない、ということ。
    すると女王は、ココロとココロのスキマに入りこんでサボテンはひとりだけ生きようとしたのではないか?と罵倒する。

    そうこうしている間に時空は歪み、女王さま(=飛び降り自殺した女)の完全な死が迫っていた…。
    それを止める方法はただひとつ。4人一緒にソウルトレイン(魂の旅路)に乗らなければならない。しかし女王さまはもう動けない。サボテンは女王さまを見殺しに出来ず死(意識の停止)を選択。イチかバチかで残りの守衛2人が手を繋ぎ、列車に乗り込む。真っ暗なトンネルの先にあったのは、天国だった…。

    何のために生きているのか。
    わからなくなることは誰にでもあるものだとおもう。
    この物語は、壁と女の会話ではココロが、王女らの会話ではカラダがバラバラになってあの世で取り戻す、というとても哀しいはなしだった。
    大切なのは、あなたがいないと寂しいとおもうシンプルな気持ち。
    そしてちゃんと相手に伝えてあげること。それだけでいい。

    個人的には、世界が反転する話は大好きなので、世界観に異論はないです。ただ、体内から溢れる音楽がたとえば、タップダンスのステップや手拍子や足音などの音同士のコミュニケーションがもっと取れていれば、更に世界観が深まるようにおもいました。

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    2010/05/14 02:20

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