満足度★★★★
エンタメ色満載の楽しい作品
劇団森が従来のイメージをがらっと変えて、エンターテイメントを前面に打ち出した作品を上演した。高校を卒業し浪人生となった主人公達が、それでも高校時代の部活を続け、部室と想い出の桜の木を守ろうとする。それは実は・・・。
シリアスなシーンの途中で突然ミュージカルになったり大喜利になったり、作演の籔博晶はあらゆる方法で観客を楽しませようと仕掛けてくる。その中にはすべったものや、メインストーリーを弱めてしまうものもなくはなかったが、しかしその徹底したサービス精神に好感が持てた。
その籔博晶が松岡修三役で出てくる。最初登場したときは、必然性のなさに違和感を感じたが、何度も登場してくるうちに、今回の作品のいい潤滑油になっていることに気がついた。
演出面では舞台の奥行きをたっぷりとって、花びら散る想い出の桜の木に照明が当たるシーンが幻想的で美しい。また客席横に仮設舞台を作り、そこから主人公がその思い出の桜の木に矢をを射るシーンがある。すごく劇場を広く使った見事な演出だ。場面転換でばたばたしたり、ちぐはぐな面もたくさんあったが、さまざまなことをやろうとしている志しが感じられ、全体としては評価出来る。
役者では久藤放役の松田隼斗と桜紗玖役の田中香にさわやかな魅力を感じた。