蜘蛛巣城 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「蜘蛛巣城」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    黒澤と『マクベス』を全く知らない方が楽しめるのかもしれない。一体何を観せられているのか途中不安になった。『マクベス』の翻案ものの最高傑作とされる黒澤明の『蜘蛛巣城』。それを下敷きにこんな作品を作る人間の業。「蜘蛛手の森」の妖婆の笑う声が聴こえるようだ。

    衝撃を受けたのは開幕から幕間ごとに流される曲。お経を英語でがなっているようにも聴こえたフスグトゥン(Khusugtun)の『Tes Gol』他。モンゴルの伝統音楽グループのニューウェーヴ。和洋折衷なおどろおどろしさ。この曲を選んだ人が今作のMVP。
    美術のセンスも良い。蜘蛛の巣の張られた背景を仕切る幕。

    主演の早乙女太一氏は声が通るので台詞が聞き易い。マクベスにしてはカッコ良すぎるが。弟の早乙女友貴(ゆうき)氏の方がこういう汚れた役は似合いそう。

    「蜘蛛手の森」の妖婆役は銀粉蝶(ぎんぷんちょう)さん。上品で声が朗々としている。

    黒澤明は『マクベス』を「自分の身の丈以上の地位を求めた故の悲劇」と語っていた。
    ちなみに黒澤明のシェイクスピア翻案ものは三作ある。『マクベス』は『蜘蛛巣城』、『リア王』は『乱』、そして実は『ハムレット』は『悪い奴ほどよく眠る』だったりする。(外国人からの指摘)。日本人よりも外国人の方が気付き易い。

    ネタバレBOX

    蜘蛛手の森が歩き出すシーンとラストの鷲津武時の矢ぶすまをどう表現するのかが注目ポイント、どちらもなかった。

    城主が妻を所望する描写や主人公の行動を正当化する要素を挿む必要はなかった。あくまでも主人公の心の出来事であるべき。逆に何の文句もない素晴らしい君主に描いた方がテーマがハッキリする。

    倉科カナさんはミスキャストだろう。山田五十鈴の役だぞ。
    ここまで弄るならマクベスと夫人が隣国に生き延びるラストでも良かった。(どうでもいい)。

    収録日だったのだが、城主が主人公の武勲を称え「北の館」の主に任命する場面、「北の館」を「一の館」と言い間違えてしまうハプニングがあった。

    『マクベス』の恐怖の本質は“罪悪感”だと思う。欲望に負けて主君を殺め、親友にまで手を掛ける。全て望みが叶った筈が“罪悪感”の後ろ暗さで不安で不安で堪らない。その不安と恐怖を掻き消す為に誰も彼もを殺していく。一体、自分が欲しかったものは何だったのか?妖婆の高笑いが聴こえてくる。精神の安寧、心の平穏こそが一番人間に必要なものだったのだ。

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    2023/03/09 15:35

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