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無償の愛
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公演情報
Orgel Theatre「
無償の愛
」の観てきた!クチコミとコメント
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ハンダラ(10494)
実演鑑賞
満足度
★★★★★
極めて詩的な作品。
ネタバレBOX
奥中央に衝立を立て袖として用いる。下手壁に沿うように長方形の台、載せてあるのは奥から白っぽいトートバッグ、赤いトートバッグ、ペンギンのぬいぐるみ、ノート。台の前に紙コップと水の入った容器を載せた机、衝立の手前客席側にベンチとテーブル、上手には斜めに設えられたベッドがある。因みにベッドのあるエリアは、狭い小屋なので部屋の仕切り迄は作れないものの病室を表している。後で説明するようにこの病室である事件が起こるのを遮蔽物なしに見ることができるので却って効果的ですらある。(他にもイツキの娘の部屋になったりするシーンもある。)
物語は病院の従業員休憩室で出会った2人の女性を中心に展開する。1人はイケメンだと直ぐついて行き、遊ばれては捨てられるという経験をしてきた掃除婦・イツキ、もうすぐ10歳になる娘・サラが居るが産み落とした時以来会わせて貰えない。サラは現在イツキの母が育てている。
もう1人はミヅキ、現在は看護助手だが、看護師になる為の勉強をしており、この道を取るか偶然イツキの娘と同名の恋人サラを取るかで紛糾、結局同棲していたLの連れ合いと別れてしまった。
この2人各々の最も大切な人それぞれに対する愛が中心となって展開するが、イツキは自称・バカで読み書きも苦手だが丁度山下清が精神薄弱児とされながら実に本質的に物事を観ていたような鋭さを持つ。彼女は今、数日後の娘の誕生日に最高のパーティー、最高の贈り物をする為に現金が欲しいのだが生憎経済的にはかなり厳しい。そんな折、病室の年老いた患者から頼み事をされた。老婆は、既に筆記する力も無いから娘への伝言をノートに書きとって欲しいというのであった。老婆はその言葉を言い終えると息を引き取ってしまった。ベッドの脇に老婆のバッグがあった。何気なくそれをみると中には現金が入っていた。イツキはそれを盗む。
暫く経ってイツキは娘の誕生日に実家を訪ね娘にプレゼントを渡したものの娘は余り喜ばなかった、既に似た物を持っていたからである。だが、娘はペンギンの話をした。何でもペンギンは自分の連れ合いが死ぬと生涯その亡骸を保持し死骸と性行為迄するというのである。
さて、娘の誕生日が終わった後休憩所で再び会ったイツキとミヅキだったが、互いにいつもと違う。ミヅキは何があったかを尋ねるが、イツキは互いの秘密を共有することを提案した。ここに至ってイツキが老婆から124万円入りのバッグを盗んだこと、然し娘の誕生日にはその金に手を付けなかったこと、遺言を書いてくれと頼まれたことを話す。ミヅキは自分がレズでパン職人で恋人のサラと別れたこと、経緯を話した。その上で老婆が言い残そうとしたことをイツキが娘に対して述べたいことに置き換えて創作しようと2人で文面を作成してゆくのだが、この文面が当に詩として昇華されたものになっている、殊にその前半は完全に詩である。
ところで、詩に迄昇華したこの文章は、ラスト イツキが破り捨てる。
その意味する所は明らかである。様々な困難や思うようには回らない人生に怖気をふるい落ち込んで人生から降りて仕舞わず、それらを総て引き受けて生きてゆく態度表明である。
ところでパン職人のサラが随所に登場するが、イツキの反応がグー。パン屋の匂いの心地良さを子供同様に喜んだり、知恵遅れとされる子供たちのように五感を用いて興味を持った対象に積極的にアプローチしてゆく仕草が、我々頭でっかちになりすぎた凡庸な人間に多くの可能性の扉を拓いてくれるからである。
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2023/03/06 16:00
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