武蔵小金井四谷怪談 公演情報 青年団リンク 口語で古典「武蔵小金井四谷怪談」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    羊頭狗肉の面白さ
    こじつければ共通点も見出せないこともないけれど、はっきり言って鶴屋南北の「東海道四谷怪談」とはほとんど関係ない内容です(笑)。
    ハナから南北の世界を現代口語で見せようと思って作った芝居とは思えなかったけど、笑えたので、まぁ、いいかという感じです。面白いけど、正直、タイトルについての肩透かし感はいかんともしがたく、「古典を現代口語演劇で」という仕掛けをうたう必要があったのか、疑問です。「四谷怪談」とするのには違和感があります。ただ、トリビア的には面白い共通点をみつけたので、古典に興味のあるかたはネタバレをお読みください。

    ネタバレBOX

    「武蔵小金井四谷怪談」は、父親役の猪股さんの怪演ぶりが面白かったです。自分は「北斗の拳」というマンガをよく知らないので、いまひとつ作者の意図の面白さがつかめなかったですが。もう少し原典に沿った話かと思って観に行ったので。
    原作の「お岩の怨念」にまつわる話とは無関係。会話の中に「東八(とうはち)道路」というのが出てきて、これが実在する道路名ということを知らなかったのですが、この芝居に登場する直美は原作では直助権兵衛という役に当たるんですね。で、直助権兵衛は「藤八五文奇妙!」という江戸の薬売りの売り声で登場する場面がありまして、「とうはち」という音が共通するんです。でも、はたして岩井さんがそれを意識して引っ掛けたのかどうかはわかりません。
    また、この公演は2本立てで、もうひとつ落語のまねごとみたいな「男の旅 大阪編」という芝居がくっついてるんですが、これは四谷怪談とは関係ない芝居。岩井さんは「廓の女郎買い」を現代的に見せています。大阪の某所にあるいわゆる「チョンの間」の話なんですが、南北の「東海道四谷怪談」には現代の「チョンの間」と同じ江戸時代の私娼窟(淫売宿)が描かれてるんですね。お岩の妹のお袖がそこで夫の佐藤与茂七と再会してしまうのですが(ちなみに、今度の公演のあらすじの解説に「直助が与茂七を殺す」と書いてありますが、直助が殺したのは実は与茂七ではなく、入れ替わった別の赤穂浪士なのです)。
    ですから、この2本目の落語の芝居のほうも、まんざら四谷怪談と関係ない話とは言えないわけです。「男の旅」は「東海道」に引っ掛けてあるような気もしますが、これも岩井さんが意図的にそうしたかどうかはわからないですが。
    「東海道四谷怪談」の三角屋敷の場は「袈裟と盛遠」という源平時代の三角関係の逸話と共通してるので、初めてその場面を観た時、南北が当然それを意識して書いたと思い、歌舞伎役者の人に質問したのですが、「いや、南北に関してそういう話は伝わっていませんねぇ」と当惑されてしまいました。また、「三角屋敷」というのも地名であり、三角関係とは関係ないわけです。「東八道路」と「藤八五文奇妙」、「チョンの間」と四谷怪談の「淫売宿」の話、岩井さんも巧まずして芝居に織り込んでいたとしたら、鶴屋南北に似た感覚の戯作者なのかもしれません。
    落語のほうも役者さんたちが面白かったですが、芝居というよりWSを観てるような感覚でしたね。
    このお芝居を観たかたには、ぜひ本家の「東海道四谷怪談」も観て頂きたいと思います。

    2

    2010/04/19 21:38

    0

    0

  • KAEさま

    コメントありがとうございました。
    そうですね。「東海道四谷怪談」の話を知らなくても芝居としては楽しめると思うのですが、こちらが当初想像したものとは違っていました。ゆるゆるの脱力感というか(笑)。「別物」と思って観たほうがよいかと。いちおう「四谷怪談」の筋がバックに字幕で出るのですが、あまりにかけ離れていて、本編を知ってる者には「うーん、あまり関係ないような・・・」って肩すかし感が強くて(笑)。、本編を知らない人には、なぜこれが古典の「お岩さんの話」なのかわかりにくいと思いますね。岩井さんもアフタートークで認めておられましたが。
    これから観るかたのためにあえてストーリーを書かなかったのですが、書いてしまうと元も子もなくなってしまうので(笑)。
    岩井さんはヨーロッパ企画の「曲がれ!スプーン」の映画版・細男の文句つけようのない演技に魅せられたのですが、ハイバイの芝居も観てみたいと思っています。

    2010/04/20 05:42

    きゃる様
    この芝居、興味はあったのですが、時間の折り合いがつかず、行けないので、きゃるさんのご感想、興味深く拝読しました。
    なるほど、なるほど、だいたい雰囲気はわかった気がします。
    ありがとうございました。

    以前、猫のホテルを観に行った時、何の脈略もなしに、劇中、延々と忠臣蔵の場面が織り込まれていて、これは、忠臣蔵を知らない人には、何のことやらの芝居だわと、呆れたことがありますが、この作品は、そういった心配はなさそうですね。
    今回は無理ですが、一度、岩井さんの作品は拝見したいなと思っています。

    2010/04/20 00:23

このページのQRコードです。

拡大