日記 公演情報 カリンカ「日記」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    意味合いは異なるが、「子供叱るな来た道だもの年寄り笑うな行く道だもの」…そんなことを考え始める世代には、滋味深い内容に思えるのでは。

    多くの人が〈いずれ〉経験するであろう老親との関係、どう寄り添い面倒を見るのか。その日常の光景を子の視点から捉えた珠玉作。全編 方言で紡がれるが、そこにも人それぞれの生きてきた土地<場所>を表しており、そこに物語の背景<終の棲家の在りよう>が透けて見えてくる。

    日常の淡々とした光景だが、飽きることはない。むしろ有り触れた登場人物ー夫婦・親子・姉妹といった近しい人間の微妙な関係、それを実にリアルに描いており共感する。老親と娘の会話では、そのテンポの違いから微妙な間<ま>、ズレ、勘違いなど言葉が持つ又は意味する面白さが感覚的に伝わる。

    演技、その設定年齢による身体性の違いー老親と娘夫婦のリアルな動きも丁寧に演出する。同時に場所・時間といった目に見えない空間等も巧く観せる。それによって更に世代間の違いを分からせる。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央にテーブルと椅子を配しただけ。そこは娘夫婦の賃貸マンションであり、夫の実家、夫々の居間になる。

    物語は、娘あい(橘花梨サン)が地方に住む年老いた両親(父-贈人サン、母-ザンヨウコ サン)を都市部の自宅へ引き取り、同居を始める。エレベーターもない低層住宅、手摺りもない階段をやっと上り、居間で話し出す老夫婦、それが日常の光景のよう。薄暗い室内、そこに格子状の照明ーさながらブラインドを通して陽が差し込み朝が来たことを思わせる。仕事が忙しく帰宅が遅い夫 健夫(森田亘サン)を気遣う老夫婦の〈声を潜めた〉会話。また姉夫婦(姉.優子-Q本かよ サン、夫.浩志-石井由多加サン)も気になり様子を見に来る。そこで高級マットレスを購入してもらったことを知り、複雑<驚きと軽い嫉妬>な感情を抱く。
    一方、健夫の父 吉雄(用松亮サン)も病に罹り、妹に任せきりで気になる。

    物語は、あいと健夫 夫婦、あいの姉夫婦、あいの両親と娘達夫婦、健夫の父と息子<又は夫婦>という全ての組み合わせ<関係性>の中で、色々な立場と感情の動きを表す。そして方言<茨城弁>で話す相手、そうでない相手を区別し、そこに人物の生まれ育った地が垣間見え、住み慣れた場所こそが暮らし易いと…。

    演技は老親のゆっくりとした口調、そして「アレ」「ソレ」といった不明確な言葉、そこに生じる間(ま)が絶妙。阿吽の呼吸というよりは、語彙が喪失しているようで、そこに老いを感じさせる。勿論、会話だけではなく、メイク、ゆっくりとした動き、腰が曲がった姿など外見からも一目瞭然である。

    気になるのは、娘<子>視点で描いているから仕方ないが、例えば健夫が実父に「どこか出掛けたか」と聞いても、一人で家に居たと。そこに年老いて出掛けることが億劫になり、孤独を思わせる老人像が立ち上がる。子にしてみれば散歩=運動は健康のためであるが、親の感覚は違う。
    物語…肉体的には未病のよう、しかし精神的な内面を描くことによって<老>親の気持、親子<世代間>のすれ違う感情がよりリアルになる。せっかく老親の内面に切り込める場面があるならば、混乱しない程度に相互視点で描いてほしいところ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/02/24 07:53

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