博士の愛した数式 公演情報 まつもと市民芸術館「博士の愛した数式」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    80分という上演時間の予告を見て、「短い!」とまず一驚。博士の記憶が80分しか持たないことに合わせたのだろうか。ギター演奏があるのはぜいたくな演出。ストレートプレイでは避けがちなナレーターを使って、短い説明で単刀直入に核心場面に入っていく。無駄のない作劇で、家政婦(安藤聖)と博士(串田和美)の出会いから、成長したルート(井上小百合)と博士の交流まで、小説の見どころはほぼ全部盛り込んでいた(と思う)。悪意のないピュアで美しい原作を、雑音のないまっすぐな芝居にうまく転換させていた。小さいながらもじんわりした感動があった。串田和美の博士が、子供のような無邪気で涙もろい感じが自然でよかった。

    ネタバレBOX

    小説の印象は強く、よく覚えているつもりだったが、冒頭から博士の義理の姉(増子倭文江)の存在をすっかり忘れていた。読んだのはもう20年も前だから仕方ない。博士が熱を出したので、看病するために家政婦は息子と泊まる。それがもとで義姉から首になるが、ルートが博士宅に遊びに行ったことで義姉は不審を抱く。母子を呼び出し「縁が切れたのに? ねらいは金?」と問いただしてくる。この険悪な状況を、博士がオイラーの公式を示して解決する展開も、妙に納得させられた。(オイラーの公式も忘れていた。後で調べたら、本当にあんな等式があった。驚き)

    最後、ルートの11歳の誕生日。ろうそくを書い出しに行った間に、博士はルートのことを忘れてしまう。劇的な幕切れ。そして家政婦の通いの仕事は終わった。博士の入った施設に、母子が時々通う。「息子は今度、中学校の数学の先生に決まったんですよ」という言葉に、いつしか10年以上たったことがわかる。博士との出会いが息子の歩む道に深く影響した。この最後は、小説同様、やはりジーンときた。誕生日のプレゼントのグローブを砂山から掘り出すのもよかった。

    0

    2023/02/22 00:07

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大