つづき 公演情報 賛否両論「つづき」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    好感がもてる小品
    「つづき」という題名。ある時点からの「それぞれの人生のつづき」を描いているからか。また、彼らの人生はこれからも続いていくという意味も込められているかもしれない。
    戦場カメラマンが主人公の芝居と聞いて、もっと重苦しい内容かと想像したが、意外にライトな感じで、音楽も良く、1時間15分という上演時間もギャラリー公演という形式にはふさわしく、作風も好感の持てる小品となった。
    旗揚げしたばかりで知名度も低いと思うが、もっと多くの人に観て貰いたかった作品だ。
    ギャラリー公演を行う場合、予算との兼ね合いで選んだのか、空間の特性は関係なく、長時間の公演を組む劇団もあるが、やはり狭小空間では観ていて疲れてしまう。わたしは、ギャラリー公演は短めに感じるくらいの芝居がちょうどよいと考えている。今回、客席をすべてフラットに配置したので、後方の客は見えにくかったと思う。多少、段差をつけるべきだったろう。
    主演はモダンスイマーズの古山憲太郎。私の残り少ない人生の中で、彼はおそらく最後に惚れこんだ男優だと思う。
    彼よりも演技の巧い人や器用な人、カッコイイ俳優はたくさんいるだろう。だが、俳優の究極の魅力はその生きざま、人間性がいかににじみ出ているかに尽きる。こんな当たり前のことに年をとってからようやく気づいたが、古山憲太郎はその意味でも稀有な存在。魅力ある男優である。背中がよい。
    もう少し年をとったら、背中で芝居のできるいい俳優になれるだろうと期待している。

    ネタバレBOX

    両親から受け継いだ写真スタジオの土地を売ろうとしている斉藤(古山憲太郎)。戦場取材のため、まとまった金が必要になったこともあるが、これまでの生活をリセットしたいという気持ちも強い。そんなところに戦場で知り合った旧友のカメラマン山下(大窪尚記)がフラッと遊びに来て、斉藤が契約しようとしている不動産会社の社員正田有希(いのこまりこ)と再会。山下と有希は10年前、牛丼屋でアルバイトをしていた時代の同僚で、山下は内心、有希に好意を抱いていた。
    斉藤が土地を売ると知って、山下は裏庭に住み着く野良猫の親子の身の上を異常なまでに心配する。バツイチの山下にとって、その猫は家族同様に大切な存在だったのだ。また、同業の斉藤の才能にも嫉妬し、ライバル意識を持っている。
    失恋を苦に自殺を図ろうとしたことのある有希は、現在の不動産会社の社長に自殺を止められたのが縁で、その会社に就職し、社長の愛人となっていた。
    斉藤を尊敬し、戦場カメラマン志望の青年、岡田(清水智史)が働きたいと何度も頼みに来るが、斉藤は相手にしない。「戦場に出たときは、旅の延長線上。おまえも一人で旅に出てみろ」と言うだけだった。岡田には2年間引きこもりの経験があった。
    斉藤は、戦場で撮った一枚の家族写真が認められて受賞したのを機に、あれこれ提案して編集長とぶつかり、仕事も干されて、世間から忘れられた状態。山下が気にかけている裏庭の野良猫にも懐かれない孤独を語り、将来に行き場のない不安を抱えていた。
    山下は日本を出ようと決めるが、岡田が猫を引き取ってもよいと言うので、安心する。そんなある日、有希の会社が倒産し、土地の売買契約は流れてしまう。ショックを受ける斉藤。せっかく、踏み出そうとしていたのに、いま、戦場へ出ないと自分を取り戻せなくなる、と。
    有希は、社長の愛人だったために、他の社員との距離があり、職場で浮いていた自分に気づく。
    4人それぞれ、心に傷をかかえながら、微妙に人間関係がつながっている。
    有希の社長の友人が斉藤の土地を買いたいと申し出、斉藤は旅立てることになり、岡田も一人旅に出ると決意する。
    斉藤と家族写真への思いの描き方が浅く、ストーリー展開にもうひとひねり起伏がほしかった気もするが、石戸良は次回作を期待したい作家だ。
    山下役の大窪、岡田役の清水が役柄に合っていて、真実味があるのが良かった。紅一点、有希役のいしこまりこは、学生のように演技が硬いのが気になったが、はつらつとした若さがある。
    「戦場カメラマンの特技」として斉藤が岡田の前で歴代幕僚長の名前を挙げる場面、ふだんは台詞の少ない寡黙な役が多く、暗記が不得意と言う古山には気の毒な場面(笑)と思ったが、何とか言い終えてホッとした。何より、本物の涙を流しての熱演には心を打たれた。

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    2010/03/30 20:29

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